第25話

「こんな名前付けられて、迷惑もいいとこだ」

愛丸はふてくされてブツブツと文句を言う。

「何を言ってるんだ、お前が産まれた時、余りにも愛らしいから母さんがそう名付けたんだ。良い名前じゃないか」

「兄貴は普通の名前だからそんな事言えるんだよッ!」

何時もの事ながら、この名前には歯痒くなる。

「あ~っ、もう止めた。俺、部屋に戻るから、後で新しいパジャマかなんか有ったら出しといてくれよ」

愛丸は話を切上げることにした。

「ああ、確かまだ買置が有った筈だから、片付けが終ったら持って行こう」

「じゃ、頼んだよ」

愛丸がそう言い残してダイニングを出て行った後、清一郎はしばしその場に佇んでいた。

「記憶喪失か……」

心持ち寂しげに俯いた清一郎がポツリと呟いた。そして直ぐに気を取直す様に「さぁてと、早く片付けてパジャマでも持って行くとするか」と、前掛をして流しへ向うのだった。

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