第21話
「ご馳走さま、今日も美味しかったよ」
愛丸は兄への細やかな感謝の意を込めていつもこう言うことにしている。
清一郎は満足気にニッコリ笑うと、片付けをする為に席を立って帯に挟んでおいた襷を掛け始めた。
いつもそれを合図に二人で片付けをするのだが、今日に限って清一郎は食器を重ねて流しへ運ぼうとする愛丸に
「ここはいいから、それより彼に付いていなさい、心細い思いをしているかもしれないからね」
と食器を引き継いだのだ。
こんな時の清一郎はひどく大人びて見える(実際大人なのだが)弟の愛丸には時折しか見せることは無いが、これが抱擁力と慈愛に満ちた心の広さを持ち合わせた、愛丸の一番好きな本来の清一郎の姿なのだ。
「分った。じゃあ後頼むね」
愛丸は清一郎の言葉に甘えることにした。
「ああそうだ、後で食べられる様に何か作っておこう」
ダイニングを出ようとしていた愛丸に清一郎はそう付け加えた。
「う…あ……そ、それはいいよ、腹減るようだったら俺が何か作るから……」
愛丸はそう答えるしかなかった。
折角作って貰っても無駄になるだけなのだ、それでは余りにも清一郎に申し訳が無い。
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