第15話

「食べないのか……?」

「うん、ゴメン……兄貴一人で食べてくれよ……」

 愛丸がそう言った途端、清一郎は眉を顰めて黙りこくってしまった。

「うっ……あ、兄貴……?」

愛丸はこの時、

(もしかして……)

と思っていたのである。

「愛……私は悲しい……たった二人っきりの兄弟だというのに、一緒に夕飯を食べることも出来ないなんて……」

(ああ……やっぱり始まった……)

愛丸は溜め息を吐いた。

「せっかく一緒に食べようと思って待っていたのに……」

清一郎は着物の袖先を握締めて、今にも泣き出しそうな気配を見せる。

「だぁ~っ!分った、分ったから泣くのだけは止めろよな!」

愛丸は清一郎に泣かれると弱いのだ。

「じゃあ、一緒に食べるのか?」

こうなると清一郎は子供同然で、どっちが年下なのか分ったもんじゃない。

「食べるよ、食べりゃいいんだろっ!! 」

「そう」

清一郎は愛丸の返事を聞くとニッコリ笑った。

「ったく……俺を肥満にする気かョ……知らねぇからな……」

愛丸がふてくされた様にブツブツと独言を言うと、すかさず清一郎が

「何か言ったか?」

と問質する。

「別に……それより、二十八にもなって泣き落としなんかするなよな、みっともないだろ」

「何の事かな?」

清一郎は惚けている。

その様子をさっきから横で見ていたミリアは、おかしくて「クスッ」と笑った。

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