第14話

「それが……今日遅くなったのも彼に逢ったからなんだ」

 半分は本当の事だが、愛丸は全部ミリアのせいにしてしまった。

「と、いうと?」

「何か様子がおかしいから色々訊いてみたんだけど……どうも記憶喪失らしいんだ」

「記憶喪失!? 」

さっきまで険しかった清一郎の目付きが少し穏やかになる。

「自分の名前さえ憶えてないらしくて、それで、放っとくわけにもいかないから……とりあえず連れて来たんだ……」

清一郎を騙すのは少し後ろめたい様な気もするが、今はそれも仕方がない。

「そうか、そういう訳なら遅くなった事は多目にみよう。それより上がって頂きなさい、気の毒に……きっと髪の毛が真っ白になる程怖い目に遭ったんだね……」

清一郎はなんともアッサリと愛丸の言葉を信じてしまったらしく、しんみりとした口調で言った。

「じゃ、上がって。こっちだよ」

愛丸はミリアを上げると、自分の部屋へ連れて行こうとした、が、それを咎める様に清一郎が

「愛丸、夕飯は?」

と言った。

「あ……俺、今腹へってないから……」

遅くなった事をミリアのせいにした以上、まさか今更友達とラーメンを食べたなどと言える訳がない。

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