第13話

「あ、俺ん家此処だよ」

 愛丸は境内まで下りてくると、社の裏手を通って自宅になっている一角にミリアを案内した。

「ただいま……」

愛丸は中の様子を窺う様にそっと玄関の引戸を開けた。そして、

「うっ……やっぱり……」

と呟いた。

 玄関を開けたその先の上がり口に、正座をした清一郎の姿があったのだ。

「何がやっぱりだ?愛丸……今、何時だと思ってる?」

清一郎は険しい表情で愛丸をギロリと睨み付けて言った。

「じゅっ……10時半……」

清一郎が『愛丸』と呼ぶ時は、怒っている時か、それとも何か重要な話が有る時か、いずれにせよ愛丸にとってロクな時ではない。

「遅いとは思わんか?」

眉間に皺を寄せた清一郎が問質す様に言った。

「アハハ……これにはちょっと訳が有って、その……」

「では、聞かせてもらおうか、その訳とやらを、ゆっくりとな……そこへ正座…ん……?」

どうやら清一郎は表の人影に気付いた様で、外へ視線を移して

「誰か来ているのか?」

と愛丸に尋ねた。

「あ、うん、ちょっとね、入って」

愛丸がそう言ってミリアを招き入れた。

入って来たミリアを見て清一郎も流石に少し驚いた様だが、それでも冷静に「こちらは?」と尋ねた。

 だが、ミリアは何も答えなかった。

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