第12話

「記憶喪失……?」

「そうだよ、それなら根掘り葉掘り訊かれなくて済むし、そうしよう、なっ、ミリア」

 愛丸は、我ながら名案だと思った。それなら白髪の事だって何とか誤魔化せるだろう。

「分りましたマスター、そう致します」

「そのマスターってのは止めてくれよ、なんかよそよそしくて嫌だな」

「では、何とお呼びすれば宜しいのでしょうか?」

「兄貴は何時も『愛』って呼んでるけど……その呼ばれ方はあまり好きじゃないんだ、だから愛丸でいいよ」

「承知致しました」

「それから、その馬鹿丁寧な言葉遣いも止めたほうがいい」

「何故でしょうか?これは敬語という一番綺麗な言葉ではないのですか?」

「そうだけど……何時も敬語で話してる奴なんか居ないよ、敬語っていうのは目上の人とか、大切なって言うか重要な相手にしか使わないんだ」

「愛丸は私にとって大切な方です」

「ミリアの星でも敬語みたいなの使ってたの?」

「いいえ、私の国には敬語の様なものはございませんので」

「じゃあ、普通に話しなよ、その方が気楽だし、コミュニケーションとりやすいだろ?」

「分りました。そうします」

ミリアは素直に承諾して答えた。

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