第11話

「そうなのですか?」

「うん、大体は年寄りだけど、でも、すご~く怖い目に遭うと白髪になることも有るそうだから、人間って不思議だよな……まっ、そんな事はどうでも良いか、って……いっけねぇ、兄貴のことすっかり忘れてた、早く帰んないと……行こうミリア、俺ん家この山下りたとこだから」

 愛丸はそう言ってミリアの手を取ると、山を下り始めた。

幼い頃から慣れ親しんだ裏山なので、暗い夜道でも難なく下りることが出来る。

「なんかワクワクするなぁ、エイリアンと一緒に暮らすなんて……だけど、兄貴に何て言おうか……エイリアンなんて言っても信じっこないし、俺の友達の顔は皆知ってるからなぁ……」

愛丸は山を下りながらブツブツと独言を言った。

「どうか致しましたか?」

「あ、いや別に……」

愛丸は言葉を濁した。

「マスター、もし、私のことが御迷惑なのでしたら……私はまた新しいマスターを探します……」

「迷惑だなんて、折角知り合ったんだからそんなこと気にするなよ、只……兄貴に何て話そうかと思って……そこで知り合ったって位じゃ一緒には暮らせないし……」

愛丸は暫く思案していた。

「そうだ!! 記憶喪失ってことにしとこう!」

それは本当に急で最高の思い付きだった。

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