第9話

「ええ……でも私は、その後直ぐに仮死睡眠に入りましたので……少しは救われました。それに……新しいマスターが見付かりましたので、もう大丈夫です」

「新しいマスター?」

愛丸はハッとした。此処には愛丸とミリアの他には誰も居ないのだ。

「もっ…もしかして俺の事?」

愛丸は、自分を指差して言った。

「ええ、そうです」

ミリアは事も無げに答えた。

「だっ ダメだよっ!俺なんか……」

愛丸が焦った様に言う。

「私はマスターが居なければ生きられないのです、ですから……マスターは死ぬ間際に新しいマスターを探す様にと……」

「でも、俺なんかがマスターなんて、出来る訳ないよ」

「貴方でなければ駄目なのです!」

「どうして俺じゃないといけないんだ?大体マスターって何なんだよ?」

「マスターは私に栄養源を供給して下さる方のことです」

「栄養源?食事の事かな?」

「ええ。そして、そのマスターを守る事が私の務めなのです」

「そうか……なら、いいよ。食事くらい兄貴に頼めば何とかなると思うし……あ、でも、そうなるとミリアは俺と一緒に暮らすことになるんだろ?」

愛丸の問いにミリアは軽く頷いた。

「だったら……その姿はちょっとマズイなぁ……」

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