第2話

愛丸は汗だくになりながら神社の上り口まで辿り着くと、足を止めた。

 しかし、「ハァハァ」と二、三度荒い息を吐いただけで又すぐに階段を上り始めていた。

(しかし……こんな時、自分ン家が神社って事がつくづく嫌だ……)

 愛丸は階段の上を見上げながら正直不気味だと思った。

 こんもりとした裏山には樹木が生い茂り、黒い影を作り出していて、薄明るい境内を浮き立たせている。

 荘厳であるが故の静寂さは反って薄気味悪く、人の気持ちを心細くさせるものだ。

(まっ、寺よりましか……)

 愛丸は何時もそう思う事にしている。

 神社の息子に生まれて来たのだから仕方がない、嫌でもこの階段を上らなければ我家に辿り着くことは出来ないのだ。

 それにしても、慣れている筈のこの風景が、今日はやけに薄気味悪く感じるのは何故だろう……

 愛丸がそんな事を思いながら、重い足を引きずって、やっと階段を上り切ったその時、辺りが急に明るくなってきた。

(なんだぁ……?)

 愛丸は、それが上からの光だと直ぐに気付いて空を見上げた。

 するとどうだろう、眩いばかりに光る球体が、今、正に頭上を通過しようとしていたのだ。

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