第23話

「…分かるよ、弟を思う気持ち。僕にも弟がいるからね。」


意外な言葉を口にした理人さんは艶然と微笑を零した。

その色気に当てられて酔いそうになる。


「名前と年齢、教えてもらえる?弟の。」


「雨宮理央(りお)です。年は16で高校1年です。高校は禍斗(かと)高校に通っていると施設の人たちが言っていました。」


「へぇー、有名なヤンキー高じゃん。施設の人が言ってるみたいにただの家でじゃないの?」


シルバーアッシュの髪をくるくると弄りながらツーサイドアップがほくそ笑む。


「七彩(ないろ)!お前いい加減にしろ、さっきから。」


「何をカリカリしてんのさ、壱。僕はホントのこと言っただけでしょ?」


のらりくらりと交わす七彩、と呼ばれるツーサイドアップに壱さんは大きな手のひらで顔を覆い、項垂れる。


「...まあ、僕らは探してみるけど…君はどんな結果であっても知りたい?」


「…え?」


「もしかしたら君の期待している結果じゃないかもしれない。危ない組織に加担していたり、あるいはもう…命を落としているかもしれない。」


あたしの期待している結果じゃないかもしれない。

理人さんの言葉があたしの心に重くのしかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る