第10話

「……行かないの?」


どうすればいいのか分からず、その場に立ち尽くしたあたしに理人、と呼ばれる人物は声をかける。


………そう言われても。


冷淡そうな見た目とは打って変わって薄い唇から紡がれる言葉はゆったりとしていて静かだ。


「あ、あたしも行っていいんですか?」


「…?鬼蜘蛛に用があるんでしょ?」


「…え、あの…?」


「…さぁ、早く乗ってお客さん。鬼蜘蛛の巣に招待するよ。」







甘美な罠に誘〈いざな〉われ、迷いこんだ街は鬼蜘蛛たちの巨大な巣窟。

張り巡らされた巧緻な蜘蛛の巣は――――――野良猫一匹逃さない。

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