第9話

いつからそこにいたのか。

まさに神出鬼没って言葉がぴったりだ。


白磁の肌に薄い唇、整った鼻筋。

緩くウェーブのかかった艶やかな黒髪。襟足はうっすら肩にかかっている。


「…うん、お客さんだよね。」


少し長めの前髪から覗く紫黒の瞳があたしを捉えた時――――――心臓が鷲掴みされたような感覚に陥った。


「あんまりその姿で長居するのも良くないし、迎えが来ているから乗って。」


恐らくこの言葉はあたしに向けたものではなく、ツーサイドアップと黒髪短髪に向けたもの。路地を抜けたところに黒塗りのワンボックスカーが一台横付けされていた。理人と呼ばれる男の言葉にお互い顔を見合わせたツーサイドアップと黒髪短髪はワンボックスカーへと滑り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る