【fragments】1:De Principiis Invocationis/ἱστορίαι

エテル基礎原理〜プリンキピア改訂第六版(写本):基礎論 序論


──未来を祈る、魔法のはじまり──


一、魔法とはなにか

魔法とは、人の「祈り」が現実に作用する構文的現象のことを指します。 この世界では、願いを言葉にし、誰かに届けようとする瞬間、 それは“祈り”となり、エテルと呼ばれる媒質に働きかけます。

エテルとは、目には見えないけれど、空気のように世界に遍在する粒子であり、 人の感情や意志、言葉や体のリズムによって“励起”されることで、魔法を可能にします。


→ *【発言者ID消失】「片想いも魔法ってこと?」

→ *【発言者ID消失】「それは呪い寄り(※実感)」


二、祈りの条件と構成

ただの欲望や衝動は、魔法にはなりません。 魔法として発現する“祈り”には、次の3つの条件があります:

言語化されていること(構文)

他者へ向けられていること(方向性)

持続的な意志であること(定着性)

このようにして構文化された祈りがエテルに作用し、現象として出力されます。 このとき、祈りの“媒体”として最も重要な役割を果たすのが──血液です。


◆《質問ログ No.00147|記録者ID:pre1》


「魔法って、誰かに“届いた”ってどうやってわかるんですか?」


sik→ 教師返信:

「たしかに、観測者がいない場合は干渉を確認できないね。でも世界すべてから切り離されたものなどいない。王はすべてを観測していらっしゃる。」


→ *【発言者ID消失】「つまり風邪ひくと魔法暴発しやすい?(←今日体育休んだ)」

→ *【発言者ID消失】「てか、鼻血も詠唱になるのでは?」

→ *【発言者ID失効】「なる。が、推奨はしない。」


三、血液と魔法の関係

血液は、生命活動を支えるだけでなく、 **人の祈りを身体の中で運ぶ“構文伝導体”**として機能します。

呼吸や心拍、神経のリズムによって活性化したエテルは、血液中を流れ、 ときに“その人の想い”を染み込ませることがあります。

特に、強い感情や切実な願いは、血液に「残留祈構性」を与え、 **魔法として発現しやすい身体状態(詠唱体)**を作り出します。


四、祈りの記録と祈核(宝石)

通常、血液は時間とともに腐敗し、分解されていきます。 しかし、あまりに強い祈りが血に染みた場合、その血は腐敗を拒み、 時間が止まったかのように“赤いまま”残ることがあります。

→ *【発言者ID消失】「つまり恋が終わらないと宝石になるんだな」

→ *【発言者ID消失】「そんで粉々になるまでが初恋ってわけだ」

→ *【ロ発言者ID消失】「なにこのページ泣けるんだけど」

これが「祈核(きかく)」──すなわち宝石化した祈りの結晶です。

祈核とは、祈りがあまりに強く、 エテルを励起し続けたまま、血液が自然の分解サイクルを拒絶し、 **時間の流れから逸脱して生成された“祈りの化石”**なのです。


→ *【発言者ID失効】「わたしの黒歴史も結晶化して消えてくれ」

→ *【発言者ID消失】「このページだけ赤く光ってたら先生の宝石になってる説」



五、祈核の性質と魔法発動

祈核は、過去の誰かの祈りの“記録媒体”であり、 魔法構文を安定させる触媒として使用されます。

これに新たな血(今この瞬間の祈り)を通すことで、 過去の祈りが再励起し、魔法として発現するのです。

このため、魔法使いたちは自らの祈核を持ち、 そこに構文を記録・継承・実行する技術を用いています。



◆《質問ログ No.00422|記録者ID:unk.》


「祈核って、ずっと眠ってるって聞いたけど……じゃあ、夢は見るの?」


→ 教師返信:

「夢を見るかはわからない。でも誰かが“その名を呼んだとき”、

 あれは一度だけ目を開けるんだ。君の声が鍵になることもある。」



◆《質問ログ No.00291|記録者ID:std.#13568-XXX》


「でも……先生。

 もし“誰にも見せない、自分に向けた祈り”だったら、

 それって魔法にならないんですか?」


→ 教師返信(補足ログ):

「君がそれを誰にも話さず、誰にも見せずに、

 世界から切り離された暗闇の中で──

 それでも祈り続けられたのなら、

 それは、きっと本物の魔法になるかもしれないね。

 ただし、それを見届けるのは、君自身だけだろう。」


六、魔法の学習と実践

本校における魔法教育では、以下の三段階で魔法を学びます:

構文の理解(祈りの言語化)

血液の制御(エテル励起の基礎訓練)

祈核操作(宝石との共鳴訓練)

魔法は一夜にして習得されるものではありません。 それは単なる技術ではなく、心と体、そして言葉の使い方そのものです。


七、補足:祈りとは、終わらなかった願いである

祈核が宝石として残るのは、祈りが“終われなかった”からです。 腐るはずの血が腐らなかったのは、 その祈りが、まだ世界に届いていなかったからです。

魔法とは、そうした終わらなかった願いを、 再び誰かの手で“触れ直す”ことで世界に届かせる術です。



この世界の魔法は、命の一部であり、→ *【不適切なハックログ】「いや宿題への抵抗に使わせて?」

→ *【不適切なハックログ】「この教科書を燃やす魔法を教えろ」

→ *【不適切なハックログ】「燃やしたら君の祈りも消えるよ」

→ *【不適切なハックログ】「(こわ)」

想いの記録であり、時間への抵抗でもある。 それを学び、使うということは、 「生きているとはどういうことか」を、問い続けることに他なりません。


◆《質問ログ No.00500|記録者ID:std.Mus.009》


「筆記って本当に禁止なんですか? だって写本あるじゃないですか。」


→ 教師補足:

「筆記は“固定”を生む。構文は“流れ”で成立する。

 写本は安全域内でのみ許された定型記録です。」


◆《備考:この写本に記録されたログは構文化されていません》

再構成・引用には「祈構倫理第13条:感情性残響保護」に基づく処理が必要です。


質問ログは、生徒の意志により公開フラグが付与されたもののみ編纂されています。


本校の写本写影部門は、閲覧ログによる構文影響を観測しています。





魔法史概論Ⅰ:構文以前の祈りたち:

──祈りが制度になるまで──


一、原初の祈りと偶発的発現

魔法の歴史は、人の“願い”が偶然に現実に干渉した瞬間から始まるとされている。 最古の記録は残っていないが、ある母が病に伏した子を救いたいと願ったとき、 彼女の吐いた血が赤く光り、手を触れた子の熱が消えたという伝承がいくつかの地域に残されている。

このような、生命の危機に直面したときに発動する原始的な“祈り”による現象が、 後に「魔法」と呼ばれるものの原型であったと考えられている。


《質問ログ No.0117|記録者ID:#7310》


「偶然、ってどういうこと? そのときの気持ちは“偶然”じゃなかったと思う。」


《未回答》



二、骨と血の時代──“信じること”の儀式化


→ *【発言者ID消失】「やだこの章タイトル厨二っぽくて好き」

→ *【発言者ID消失】「血と汗と涙を流せ(中間試験)」

魔法が最初に「体系」として扱われ始めたのは、 人々が死者の骨に文字や印を刻み、そこに血を流して祈る儀式を行うようになった頃である。

この頃にはすでに、

祈りは言葉にしなければならない

骨や血など、身体の“残りもの”に意味を込める

一定の順序と形式があると成功しやすい

という**魔法の前提構造(プロト構文)**が自然発生的に確立されつつあった。

この時代の魔法は個人の精神と密接に結びつき、 発動者本人の感情と生命力に強く依存していたため、非常に不安定であったとされる。


《質問ログ No.0243|記録者ID:#6399》


「骨って、どうして残ったものなのに“祈り”を通せるんですか?」

(返信)「残ることと、忘れられないことは、ちょっと似ているんだよ。」





三、祈核の発見と“残った祈り”の再利用

ある時代から、「死者の血が、赤いまま腐らず残っている」という現象が報告され始める。 この異常な血の塊は、やがて硬質化し、赤黒く光る宝石のような物体へと変質することがあり、 それが後に**“祈核(きかく)”**と呼ばれるようになる。

これらは特定の言葉(構文)や感情によって共鳴し、魔法を再現する力を持っていた。 この発見によって、魔法は**「一度きりの奇跡」から「記録し、再現できる技術」へと転換**することになる。

この時代は「祈核文明期」と呼ばれ、 祈核を中心に据えた社会・宗教・戦術体系が生まれた。


《質問ログ No.0381|記録者ID:std.alta》


「どうして腐らなかったんですか?

 “届かなかった”からって、そんなに引きずるんですか?」





四、構文の確立と技術体系化

「祈核から引き出せる力には、一定の言語パターン(構文)と、 血液や感情による励起エネルギーが必要である」 という法則が明文化されたのが、この時代である。

この頃から、

魔法構文の体系化(詠唱文、接頭・接尾句、対象指定など)

構文教育の導入(読み書きと並行して訓練)

杖や道具による媒介技術の発展

など、魔法が「学問」として扱われるようになっていく。


五、道具と制度の発展

祈核の持ち運びと発動補助のために、**骨や魔獣の角などを祈りの導管として加工した“杖”**が発明される。 これにより、手で直接宝石に触れずとも魔法が扱えるようになり、安全性と汎用性が飛躍的に向上した。

その後、杖はさらに金属や樹脂、構文回路などを組み込んだ“詠導兵装”へと発展し、 祈核を核石として内蔵する「携行魔導具」が普及していく。

同時に、国家や組織が祈核・構文を管理・規制するようになり、 魔法は宗教から独立した社会制度・軍事体系の一部として定着していく。

《質問ログ No.0602|記録者ID:std.E.IZA006》


「この“杖”って、誰かの骨だったりするんですか?」


→ 教師返信ログ:


「そう。最初はそうだった。でも今の君たちは、

 それを“道具”として使えるようになった──それが進歩かどうかは、まだわからない。」



【発言者ID消失】「この教科書自体が祈核化してる説(全然腐らないから)」

【発言者ID消失】「“君の想いは永久保存”って言われてドキッとした」

【発言者ID消失】「いやそれ失恋構文じゃん」

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