5、宇宙の寿命について
車道は濡れていた。私たちの吐く息で、車内は蒸れていた。コカ・コーラカップの中の冷たいカップの外側には、湿って温度の温かい室内にあった水蒸気が冷やされ、液体となって生まれていた。窓の外の小降りの雨たちは、地面に落ちて命が尽きる前に、新しく生まれた彼らに、ハッピーバースデ―の歌を歌っていた。
横断歩道の信号機が青になり、子どもたちが公園の方にかけて行った。それに続いて、信号機の中の人のマークもじっと雨の中、夜なのに一人で光っているのが寂しくなったようで、子どもたちを追って公園の方に走っていってしまった。そのせいで、いつまでたっての信号機は赤にならず、僕たちは待ちぼうけをくらった。弾丸を食らうように。
「あなたたちの好きな場所に連れていって。」フーリエが言った。「変な場所でなければ、どこでもいいわよ。」
運転中だったが、サリーはそんなことどうでもいいという態度で、後部座席を振り返り「お前はどうしたいんだ」と僕に聞いた。彼の夜間運転用サングラスの向こうに、ぎょろりとした目の球が二つ並んでいた。そのとき、先ほど脱走を企てた信号機のマークが車道に飛び出した。しかし、サリーはどうでもいいという態度で、彼をはね、そのまま僕の方を見ていた。一緒に遊んでいた子どもたちは無邪気そうに、自分の家に帰っていった。
「僕もそろそろお家に帰りたいな。」僕は言った。
「君も、僕もそうだけど、時間は無限にあるわけではない。この宇宙だって、およそ138億年前に生まれたけど、宇宙にだって寿命はある。それに比べて、僕たちの一生は本当にはかない。だから、今できることを君のその頭を使ってよく考えるんだ。」
「君は随分と残酷な考え方をするんだね。フーリエ、君はどう思う?」
コカ・コーラの水滴たちも、彼女のそばにいることができて幸せそうに見えた。彼女はそのうちの一つを器用に指先に移し、舌の先に乗せてその味を確かめた。
「よければ、あなたたち私の家に来てもいいわよ。」彼女は何でもないよに言った。「実はこの道を真っすぐいって、左にある桜の木の手前にある家に私住んでいるの。」
「いいのかい、おじゃましても。男、二人だぜ。」とサリー。
「別に気にしないわ。自慢の子犬がいるのよ。」と、彼女は自慢のイヤリングを見せびらかすように僕の方を見た。目で「あなたは、どうしたいの?」と彼女は聞いた。
僕は、携帯電話の新機能である無線連絡機能を使って、彼女にテレパシーで「君の家の子犬に会いたいな」と伝えた。
「これで決まりだな」とサリーが言うと、雨が止み、雲の合間から月が見えた。僕はその月を見ながら、宇宙の寿命について考えを巡らせていた。
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