第7話 セルラン島

ザクラたちは、乗組員たちの案内によりセルラン島にたどり着いた。

「着いたぞ。ここがセルラン島だ」

「あの崖の上。あれが“あるお方”の居城だ」

船は、海にしている島の洞窟に停まり、ザクラたちは乗組員たちの案内で、居城に乗り込む。

「そういや、あんたたちの名前を聞いてなかったね。なんていうの?」

ザクラは先頭を歩く乗組員たちに小さく話しかけた。

「俺名はナイル」

「俺はライア」

顔に傷がある男は、ナイルと名乗り、左目に眼帯をつけている男はライアと名乗った。

「そういや、お前の名は?」

ナイルは逆にザクラに名前を尋ねる。「私?私は、春風ザクラ」

「春風ザクラ?!」

ナイルとライアは驚いた声をあげる。

「ちょっと、声がでかい!!」

星利が慌てて2人を咎める。

「あ、すまん」

「…春風ザクラって、あんたのことだったのか!」

声を小さく戻し、ナイルたちはマジマジとザクラを見る。

「人の顔をまじまじと見ないでよ」

「いやいや、捕まったとき、ただものではないと思ってたけど…」

「…まさか、あんたが伝説の海救主だとは」

「え? なんであんたらが私が伝説の海救主だって知ってるのよ?」

ザクラはナイルとライアが自分の名を聞いただけで、ザクラが伝説の海救主だと分かったのか疑問に思った。

ザクラが海救主というヒ-ロ-であることは、本人も今まで知らなかったからなおさらである。


「海救主。オレらにイルカを捕らえるように言った奴、お前のことを知ってるぞ」

「え?」

「どういうことだよ? 伝説の海救主であることと、それが春風であることを知っているなんて…」

ザクラも、この城の先にいる、“あるお方”がなぜ自分のことを知っているのかを不思議に思っていた。

だが、今はそれを考えている時間はない。

「…とにかく、先に行こう。イルカたちが待ってるだろうから」

「うん」

ザクラたちは城の内部に足を踏み入れた。


ザクラたちは城の兵士たちの目から隠れながら、イルカたちのいる場所を探る。

そこからしばらく歩いた時。

「………あ」

兵士たちと鉢合わせしてしまった。

兵士たちも上から降りてくる人がいるとは思ってなかったようで、ザクラたちと同様に驚く。

「…に、逃げろ!」

ザクラたちはあわてて引き返し、上の階に上がろうとする。

兵士たちもそれを見て、声を張り上げる。

「不審者あり!!!皆のもの、捕らえよ!!」

その声を聞いて兵士たちが集まってくる。

そしてあっという間に、ザクラたちの退路をふさいだ。

「かくなる上は…!」

ザクラはそう言って、比較的人が少ない側の兵士たちに向かって走って行った。

「ザクラ!?」

ザクラは兵士に向けて飛び蹴りを喰らわせた。

「わ!?」

ザクラの蹴りを受けて、兵士は倒れる、はずだったが。

「なに!?」

兵士はザクラの蹴りをかわし、逆にザクラに攻撃をした。

ザクラは階段を転げる。

「ザクラ!」

「ザクラちゃん!」

「春風!」

と、その時。靴音が聞こえてきた。

ザクラたちはその音の方を見上げる。

「なにをやっている? 騒がしい!」

そこには、一人の男がいた。

「おや?お前らは…。ナイルとライアだったか…?」

「“あるお方”さま…!」

「おや?そこにいる強気なお嬢さんは、伝説の海救主さまじゃないですか?」

ザクラを見つけ、あるお方は不気味に笑う。

ザクラはそれを見て、全身に悪寒が走ったのを感じた。

こいつはヤバイ。

ザクラは本能でそう感じた。

「…なぜ、私が伝説の海救主だと知っている?が伝説の海救であると知っているのは現時点ではまだわずかな人間だけだけど?」

「知っているもなにも。オレはお前の力を狙っているからな」

そう言って、あるお方はザクラたちに兵士たちを仕向ける。

ザクラと北斗はそれぞれ変身し、攻撃をする。しかし、何故か2人の攻撃が効かない。

「くそ!なぜ効かない!?」

「くくく、甘いな、火創主と海救主よ! 兵士たちの鎧に事前に呪力避けを施してあるのだ。だから貴様らの術は効かない!」

「…くそっ!」

次第にザクラたちに兵士たちがジリジリと寄ってくる。

すると。

「きゃっ!?」

鈴が背後の兵士に捕まった。

「鈴!」

「鈴ちゃん!」

見ると、いつの間にか星利も捕まっていた。

「…貴様っ!卑怯だぞ!」

「卑怯だといわれようがオレには変わらんわ!兵士ども、海救主たち2人を捕らえよ!」

すると兵士たちが上に覆い被るように、ザクラたちに襲いかかった。

ザクラたちは攻守しようとするが身動きができず、ついに捕らわれてしまった。

「海救主と他の奴らは別の牢へ入れておけ」

「くっ…」

そして、捕まった今でもなお暴れているザクラを見て笑う。

「伝説の海救主よ。あとでかわいがってやる」

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