第6話 鬼姫
「おい、何があった?!」
クルーザ-の爆発音を聞いて、北斗たちがやってきた。
「えっと…」
様子を見に来た北斗たちはその状況に唖然とした。
クルーザ-が派手に爆発し、乗組員らしき2人が水面でもがき、それを引っ張りあげ、こっちに来ようとしているザクラ。
鈴はそれを見て、大きく溜め息をつく。
「…まったく、あの子は…」
ザクラが暴れた、と大体把握した鈴はため息をついた。
「…へ?」
「ザクラはね、幼い頃から武術をやってきたの。だから強いの。怒るとあの子はその強さを奮うからめちゃくちゃ怖いの。鬼のように強くなる、鬼のように怖くなる、だから、周りの男子から、“鬼姫”っていわれていたわ」
「お、鬼姫…」
「で、なんでイルカを捕まえようとしてたの?」
ザクラは捕らえた乗組員2人をデッキにて尋問をしていた。
ザクラはまだ“鬼姫”状態で、かつ2人は両手足を拘束されているため、尋問というか拷問である。
「…なぁ、あれが“伝説の海救主"か…?」
「…ある意味、最凶だな。」
明らかにイメージとはほど遠い、と北斗と星利は心の中で思ったのだった。
それから数十分後。
「は、話します!」
乗組員2人のうち、顔に傷がある男がようやく口を割った。
「じゃ、話して? 星利達も聞くでしょ?」
ザクラはそう言って、星利たちの隠れているのを見る。
「お、おう…」
“鬼姫”状態のザクラにビビりながら北斗たちは答えた。
「なんか長い話になりそうだから、とりあえずこれで体拭いてください」
その傍らでいつの間にか鈴は船内からバスタオルを2枚持ち出し、ずぶ濡れの2人に渡した。
「…詳しい話は知らねぇ。俺らは雇われてイルカの捕獲をしていた。だから、そんな命令を下した上の人間の意志なんて知らない。」
「ああ」
もう1人の、左目に眼帯をつけている男が相槌を打つ。
とりあえず拘束を外され、鈴から渡されたバスタオルを肩にかけた2人は話し出した。
「雇った人間って?」
「名前は教えてもらえなかった。でも、その人間は、他の奴らから“あるお方様”って呼ばれていたな」
「“あるお方様”ねぇ…。あと、捕らえたイルカたちをどこにやった?」
「ここから南に、セルラン島という島がある。イルカたちはセルラン島の、“あるお方様”のアジトにいる」
「セルラン島…」
「そこに、イルカたちがいるのね?」
「ああ。」
「…どうしますか?伝説の海救主さま」
そう言って、北斗はザクラを見る。
「…イルカたちを助けにいく。話を聞く限りだと、この人たちを捕まえたとして、イルカ狩りが終わった訳じゃなさそう。なにより、嫌がるイルカたちを捕まえたのは許せない」
ザクラは、そう答えた。
「了解。-それじゃ、あんたたち。」
「あ?」
捕らわれた乗組員たちが顔をあげる。
「そのセルラン島まで案内頼む」
ザクラまでとはいかないが、少し冷たさを帯びた声と表情で北斗が2人に指示を出した。
「おぅ…」
こうして一行は、セルラン島に向けて動き出したのだった。
一方その頃、セルラン島の崖の上にある高い城の中では、海を見つめる男がいた。
「くっくっく…。あの“伝説の海救主”はそろそろこの罠にかかる頃か…」
男はそう言うと、不気味に笑った。
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