2話 龍海side

夜も更け、オレは自室で愛する妻の写真の前で酒を飲んでいた。


「…あいつがあんなこと言うようになるとはな…」

オレの脳裏に、夕方あいつが言った言葉が浮かぶ。

“それなら私は行く。”

“自分にしかできない役目があるなら、私はそれに全力を尽くしたい"

小さくてやんちゃだったザクラがあんなこと言う歳になったのか…。

「…なぁ、すみれ。あいつを守ってくれよ」

あいつは木々に若葉が繁ったら、この国を離れる。 長年育ったこの家も。

そして、父であるオレからも。

でも、オレにはあいつの旅立ちを止めることはできない。世界があいつの助けを待っている。ザクラはそれに挑みたいと言っている。本来なら父としてあいつを励まし、見送るべきだろう。

「でも…オレは…」

両目から、滴がこぼれる。オレのもとから離れてほしくない。でもあいつにはやるべきことがある。

「オレは…、オレは、ここで…見送るしかできない…」

菫、とオレは妻を見上げる。

「オレの分まで、あいつを見守ってやってくれ…」

オレはそう言って、残った酒を一気に飲みあけた。

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