Wednesday
第29話
次の日。
私は同じフロアで、隣に島を構える「営業サポート課」の前で、自分でも分かるくらいの険しい顔をして書類を抱えて立っていた。
なんだか思ったより相当緊張してしまっているのだと、書類を握る手に力が入っていることで、そう気がつく。
頭の中では、昨日の夜の、ミツとの会話を思い出していた。
「__そもそも、なんで有宇はそんなに仕事が多いの?」
またあの美味しいハーブティーを入れてくれたミツは、カウンターで隣あわせに座ってそう言ってくる。
これ店長のだって言ってたけどこんな平然と使って良いのか、と思いながらも、その優しい香りに誘われるようにマグカップに口付ける。
「私は営業だから、外に出たりすることが多いんだけど、外で仕事をすれば、その分、事務仕事がどんどん溜まっていく。
それを捌くのは、やっぱり会社に戻ってからになっちゃうから。」
「…じゃあ、営業の人はみんなそうなの?」
「一応ね、営業サポート課っていうのがあって。
例えば見積もりとか、発注作業とか。そういうのを営業が頼むと、引き受けてくれるところなんだけど。
でもやっぱり、ベテランの人たちが率先してお願いしたりするから。…若手は出来る限り自分でやろうとする、というか。」
「……」
相変わらずマスクをしているのに、一気にその表情の雲行きが怪しくなったと分かるミツに、私は少し焦るように言葉を重ねる。
「で、でも見積もりも発注も、私、結構営サポの人に負けないくらい早く出来るんだよ。
4年目なのに優秀だね、ってよく言われてるんだよ?」
へら、と私は笑ったつもりだったけれど隣でこちらを見つめるミツの表情は変わらないままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます