第27話

「お弁当、返すね。一応洗ってあるけど。


コンビニくらいしかこの時間じゃ買えるとこ無くて、

でも一応お礼にお菓子とか、入れてみた。」




そんなもので申し訳ない、そう思いながら紙袋を差し出すと、ミツは「そんなの良いのに。」と眉を少し下げて受け取った。




なんか、少し名残惜しいけれど、目的も達成できたし

「じゃあ、」と言葉を紡ぎかけた時だった。



「…これは、オネダリ?」


「……へ?」


「また作って、ってこと?」



今しがた渡した紙袋を少し持ち上げてそう言うミツに私はかたまる。


オネダリ?



「ち、違います…!!」



自分の中で言葉の反復作業を終えた後、焦って否定するのに、そんな私を見ても、お構いなしに楽しそうにクスクス笑う。



…絶対遊ばれている。このお洒落なお店の店長代理に完全に面白がられている。



何を反論しても笑われそうだと黙って鋭い目を向けるしか無かった私の顔に、その時、ぽつりと冷たい雫が落ちてきた。



「……あ、降ってきたな。」


「そっか。夜から雨だって天気予報で言ってた。」


「有宇。どうする?」


「…え?」


「……雨宿り、していく?」



こちらにそう、軽い調子で問いかけるミツは、なんか、私がなんて答えるか、分かっている感じがしてちょっと悔しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る