第15話

それから数十分後、マチのしっかりある紙袋を持った彼が再びカウンターまでやってくる。


「これ、朝のおにぎりと、お昼用の弁当ね。」


「……え?」


その紙袋を少し広げて中身を見せながらそう軽く告げられる。


綺麗に三角に形作られたおにぎりと、シンプルなタッパーが入っていた。



「ちゃんと食べて。心が疲れてる時こそ、食事は大事だよ。」


「………良いの?」


「そんな大したものでも無いから。会社に冷蔵庫と電子レンジはある?」


「あ、ある。」


「うん、じゃあ朝行ったらちゃんと入れて、食べる時にあっためて食べて。」


「お、お母さんみたい。」


「本当にこんな手のかかる娘は心配です。」




この人、なんでこんな優しいんだろう。


なんだかまたツンと鼻の奥にくる痛みに私は焦る。



「…絶対食べて、じゃ無いと絶交するから。」


「絶交って。」


その発言に私は思わず笑ってしまった。


今日会ったばかりなのに、絶交ってどういうことなの。

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