第10話

「……食品メーカーで働いて4年目なんだけど。私は営業職をやってて。」


「うん。」


「入社した時からずっとかな。OJTが全く整ってない環境で。」


「…OJT?」


「あ、上司が実務とかを通してスキルとかノウハウとか、そう言うものを教えてくれる体制って言うのかな。」


「…逆にそれ無しにどうやって仕事覚えるの?」



眉を潜めてそう言う彼の質問は本当にその通りだった。



研修が終わって、配属されて、すぐに上司が持っていた案件の引き継ぎが始まった。


“基本的なことも、実践の中で学べば良いから“


俺の時代はそうだった、そう言う上司の発言は、それは確かにそうなのかもしれない。



だけど当たり前に不安しか無くて、お客さんに怒られたって何で怒られてるのかさえよく分からない、そんな状態で。



とにかく、毎日必死だった。



「…トマトの育て方が、分からないとするでしょ。」


「…うん?」


「どこの業者で仕入れるのか、どんな苗が適してるのか、肥料は何が良いのか。


押し付けてくる上司以外の人は、皆んな自分の苗を育てるので必死だし、そんなことは誰も教えてくれない。


それでも、トマトはそろそろ収穫できそうなのかって、それは当たり前に聞かれる。そういう感じかなあ。」



過程はなんとか頑張れ。結果だけはちゃんと聞く。


それは、やり方を自分なりに覚えて1つやっと仕事を終えられた私にとって、最初はあまりに辛かった。

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