第8話

「…ん?店長じゃないんですか。」



「俺?ああ、違うよ。ここの店長、今ちょっと休みなんだよね。

だから俺が今日から一週間だけ代理で来てる。」


「そうだったんですか。」


なるほど、だからこの人を見かけるのは初めてだったのか。



「さて。」


少しだけシンクに残っていた洗い物を手際よく片付けて手を拭く彼のそんな言葉に思わず視線を上げる。



「……さっきも言ったけど今日から1週間、ここで店長代理をやってるミツと申します。」


「は、はい。」


カウンターを挟んで向き合う私にふわりと笑った彼は、なぜか少しだけ改まってそう言う。


「…いや、名前聞きたかったけどそれなら自分から名乗るべきかなと思って。」


ちょっとだけ照れたようにそう言う彼の発言に私も思わず微笑んでしまった。



「…このお店の近くに住んでる、有宇ゆうです。」


「歳も聞いて大丈夫?」


「あ、25歳です。」


「なんだ同い年だ。敬語じゃなくて良いよ。」


目元を解してそう言う優しいテノールが耳に心地よく響く。



「その年で、店長代理してて凄い、ね。」


「全然。いつもと勝手が違うからよく分かんないし色んな人に聞きまくってるよ。」



ケロリと笑ってそう言う彼はシンク周りを丁寧に拭いて、再びカウンターを回って私の隣に腰掛ける。

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