第3話

いつもなら眠っているかのように真っ暗な建物が密集した一角。



だけど今日は、その中に一か所だけ漏れる光を見つけた。




間接照明のほわりと柔らかい電球色に、私は足が止まる。


他の建物に挟まれたその場所は、確かご飯屋さんだった気がする。

…けど、常に終電で帰ってくる私はこの店が開いているタイミングに遭遇できた事が無い。



もうとっくにお店が閉まっている筈のこの時間に、電気が付いていることなんて今まで一度も無かった。



誘われるようにそのお店へ近づいた私は、木目調のお洒落な扉のすぐ隣の小窓に視線をうつす。


漏れる光はここからだ、そう思って店内を恐る恐る覗く。看板とかは片付けられているし、もしかして電気の消し忘れだろうか。



「……誰か、いる。」



思わずそう呟いてしまった。


こじんまりした店内は、殆ど椅子をテーブルに上げてクローズしているかのように見える。


だけど、カウンター席の奥で座って何かを書いている人影が見えた。

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