第14話

「こんな惨事になると思いもしなかったから何も無かった事にしようとしたのさ。その挙げ句に父さんと母さんは僕の血から生まれたウイルスに感染して死んだ」

フィーロは事実を正直に話し始めた。

「捨てる神あれば拾う神ありとは良く言ったものだよ」

アクロスが言う。

「みんな集まるなら食堂行こうか」

フィーロはいつもの明るい笑顔を見せてその場に居たみんなに言った。

この時にはナナシもこの場に現れていたのである。

「行ったらまずかったかな」

ナナシがアクロスを見た。

「丁度良いタイミングで現れたのかも。気にする事無いよ」

アクロスは優しい笑顔でナナシに答える。

「ん…」

ナナシは複雑な気分になった。

こうしていつもの食堂での会話へ。

フィーロはいつもの様に色んな物を食べる。

マリアは炭酸の入った水を飲んでいるがその表情はいつも以上に険しかった。

そこへアクロスが回復したメルリラを連れて現れる。

「連れて来た」

アクロスは席に着くとチキンウイングを食べ始めた。

「悪かったね。巻き込んで」

フィーロがメルリラに言う。

「フィーロが気にする事じゃない」

メルリラは言った。

「何か気になる事でもあるの?」

アクロスがメルリラを見る。

「うん…」

メルリラは困っていた。

「ベルゼブルがウイルスに未感染ってとこ心配してる?」

フィーロが言う。

メルリラは思い切り驚いた。

フィーロがベルゼブルがウイルスに感染した事が無い事を知っていた事に驚いたらしい。

「そんな驚くなよ。ベルゼブルがウイルスに感染したって聞いた事が無いだけ」

「そうだね」

アクロスとフィーロが言う。

「それだけ?」

メルリラはアクロスとフィーロを見た。

アクロスはそっぽを向いてフィーロは何とも言えない表情で溜息をつく。

「何か知ってるわね」

マリアもフィーロを見た。

「僕とベルゼブルは同じ遺伝子を持っている。でも兄弟や双子ではありません。さて、どうしてでしょう」

フィーロは笑顔でマリアに言う。

「骨髄移植?」

マリアはフィーロを見たまま眉をひそめた。

「正解」

フィーロは笑顔のまま答える。

骨髄移植すると移植した側の血液型に変化したりするそうなのだがフィーロとベルゼブルにはそれ以上の事が起こっていたらしい。

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