第15話
「貴方とベルゼブルの遺伝子が一緒って事は貴方の血と彼の血に同じ事をすれば同じ反応が起きてもおかしくないわよねぇ?」
マリアはある答えに辿り着いた。
「流石はマリア」
フィーロは笑顔で言う。
「新しいウイルスは本当に蠅のウイルスってわけね」
マリアは頭を抱えてしまった。
新たなウイルスはベルゼブルの血を加工して作られたらしい。
「メルリラと聖祈教の幹部の体内に残った遺伝子を調べたらベルゼブル自体の遺伝子も残っていたよ。そこにナナシの血液や血清を調合して新たな血清を作ろうとした」
フィーロは先手を打っていた様である。
「けど、やめたって言い方だね」
アクロスがフィーロに言った。
「直にナナシの血を輸血する方が早いし」
フィーロは「えへへ」と言う子供の様な笑顔を見せる。
「流石にそれはキツいわ」
アクロスがフィーロにツッコんだ。
「ごめん」
フィーロは謝る。
「その方が少量で済むわけだ」
マリアは真剣な眼差しでフィーロを見た。
「最初の実験に戻ったわけだ。あの時も直に輸血する事で効果は見られてたわけじゃない。早く気付かなくてごめんね、ナナシ」
フィーロはマリアからナナシに視線を移す。
「それとーー」
(!)
フィーロは突然肉を切るナイフで手に傷をつけた。
「何してるの?」
マリアは慌てる。
「ナナシ」
フィーロはナナシを見た。
ナナシはコクりと頷くとフィーロに近付いて、傷付いた手に触れる。
温かい光がナナシから放たれるとその光を浴びたフィーロの手から傷が消えた。
傷が癒えたのである。
マリアだけでなくアクロスやメルリラもそれには驚いた。
「君の名前はルシファーだ。神に対抗する堕天使ーーウイルスさえ消してしまえば後は平和な時代に戻る筈なんだ」
フィーロはナナシことルシファーの手を掴んで言う。
「わかった」
ルシファーは今以上にフィーロに協力する事を約束した。
それからウイルス感染者が消えるまで五年の月日がかかった。
その頃には聖祈教の信者も居なくなる。
ベルゼブルは自分の作り出したウイルスが効かなくなる事を想定していなかったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます