第11話

(死ぬんだ…)

メルリラがそう覚悟した時、誰かがまた何かを彼に注射した。

メルリラは一度意識を失う。

気が付いた時、彼はフィーロの家の研究室に収容されていた。

メルリラが捨てられた場所はフィーロの家のすぐ近く。

彼に二度目の注射を施したのはフィーロだったのである。

イートの散歩に行ってすぐにメルリラを見つけたのだ。

死のウイルスに感染するとまず身体中の血管が浮き出る。

謎なのは体内にウイルスを射たれたにも関わらず何故メルリラが死なずに済んだのかと言う事だった。

フィーロは死んだ幹部の遺体も収容し、マリアに二人を見つけた時の事を話していたので、マリアはメルリラも幹部も検査する。

二人共同じウイルスに感染してはいたが違う事が一つだけあった。

解毒剤である。

主にはメルリラを殺す気は無かった様にも取れる話なのだが彼には新しいウイルスに対応した解毒剤も射たれていた。

要するにメルリラは最初の時点でウイルスと解毒剤を射たれていた事になる。

だがその解毒剤では新しいウイルスは解毒しきれないらしい。

フィーロが射った血清で新しいウイルスは解毒された様だ。

この血清はナナシの血で作られた血清であるわけだが、新しいウイルスにはこの血清も対応しきれるわけではない。

ナナシの血から作られる血清と主の持つ新しい解毒剤を合わせる事で新しいウイルスは打破出来る事が判明する。

新しいウイルス用の解毒剤はマリアによって完成するのだった。

「偶然が重なると必然になるんだよね~」

マリアから報告を受けたフィーロはいつもの様に自由に食事を楽しむ。

「貴方、不死身よね」

マリアが冷めた表情でフィーロを見た。

「そう?」

フィーロはチキンウィングを食べている。

「そうじゃないのよ。だってメルリラをそこまで運んだであろう人物はメルリラから増殖したウイルスで死んでるのよ?なのに貴方はそのウイルスにさえ感染しなかった。死のウイルスに感染した事の無い貴方には血清を射つ事も出来ないのに」

マリアはフィーロが死のウイルスに感染しないのが不思議で仕方が無かった。

「僕の血を調べてみたら?マリア、僕の血は詳しく調べた事無いでしょ」

フィーロは笑顔でマリアを見る。

マリアは何とも言いにくい表情を見せた。

「研究のネタは尽きないねぇ」

フィーロはあっけらかんとしている。

「大量採血してくれる」

マリアはフィーロの服を掴んだ。

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