第10話
「ここに居れば解毒剤すぐ射てるもーん」
フィーロは暢気な事を言っている。
マリアは頭を抱えてしまった。
「ナナシは?」
フィーロはナナシの姿を捜す。
「大量採血後はいつも寝てるでしょ。今日も同じよ。貧血が酷過ぎて起きていられないって言うのが理由だけど早くそんな採血も要らなくなると良いわね」
マリアはスコーンにジャムを付けて食べ始めた。
「血を見た後にイチゴジャムは見たくない」
フィーロが青ざめる。
「内臓摘出後のレバニラ炒めもダメね」
マリアは微笑った。
「僕は医者じゃない」
「医者じゃなくて良かったわね」
「そうね」
フィーロは食堂から出て行く。
マリアはそんな彼を気にする事無くティータイムを楽しんだ。
そんな時、聖祈教の主の下に目隠しをされた青年が連れて来られる。
「これがクロノスだと言うのか?」
主は幹部をジッと見た。
「はい。皆に配られた写真を目印に見つけました」
幹部は言う。
「これはクロノスではない」
主は言い切った。
「ではどう致しましょう」
幹部は困る。
「どうしたい?メルリラ」
主は目隠しをされた青年に直に聞いた。
主は彼を知っているらしい。
「君がベルゼブル?」
メルリラは目隠しをされたまま眉をひそめている。
「ベルゼブルか。どうせダミアンだろうな。その名付け親は」
主は微笑った。
「フィーロの事?」
メルリラは主に問う。
「そんな名前だったなぁ」
主は遠い目をした。
「ナナシ…」
メルリラが主をそう呼ぶ。
「そう呼ばれるよりベルゼブルの方が良いか。だが私の名は主だ。聖祈教の神なのさ」
主の笑顔が不敵な笑みに変わった。
「--従わぬ者は殺せ。君はそうこいつらに指示したのか?」
メルリラが主に質問する。
「どうだったかなぁ。だが従わぬなら消し去るのは事実さ。死のウイルスは悪魔に従いし者にのみ感染する」
主は不敵に微笑った。
「この世に神は居ない。殺すなら殺せ。クロノスじゃない僕に用は無いだろ?」
メルリラは言う。
「ああ」
そう言うと主はメルリラの首に透明な液体を注射した。
「捨てて来い。この者は死のウイルスに感染した」
主にそう言われた幹部は本当に廃墟と化した街にメルリラを捨てる。
幹部には死のウイルスの解毒剤が与えられていたのだ。
だが--。
「何故…」
幹部もその場に倒れる。
死のウイルスの威力は強化されていたのだ。
目隠しされたメルリラはただ苦しむ。
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