第9話
「ここから出れば君は死ぬ。僕も殺す数は減らしたいよ。だから僕に従う存在は殺さない。その約束は守るよ」
主の表情が優しくなる。
「だったらどうしてフィーロ達と敵対するのさ」
ドクターが主を見て聞いた。
「僕に敵対しているからさ。理由はそれだけだよ」
主は再び不敵に微笑う。
ドクターことミシュラムは再び壁の方を向いて身体を丸めて両手で耳を塞いでしまった。
「さて、そろそろ新たなウイルスを撒こうかな。それにはクロノスの能力が必要不可欠」
主はそう言うと壁に掛けてあるマイクを手にする。
「クロノスを我が前に。生きたまま連れて来るのだ」
聖祈教の本部にある幹部室に流れる主の声。
白い仮面を着けた幹部達が席から立ち上がり部屋を出て行った。
クロノスを捜しに行ったのである。
そのクロノスとは時を止める能力を持つ青年の事で、その彼は何故かフィーロと食事をしていた。
「やっぱお腹空いたらここに来るのが一番だね。いつ来ても料理が美味い」
クロノスことアクロスは勢い良く肉にかぶりついている。
「蠅のウイルスの解毒剤が欲しいって事は蠅と戦うわけだよね?」
フィーロがアクロスに笑顔で質問した。
「そうなるわな。元々従う気無いし。このメシが毎日食えるならフィーロに付いちゃう」
アクロスはフィーロとは違う笑顔でそう言い切る。
「仲間なら大歓迎だよ、アクロス」
フィーロは笑顔を絶やさない。
「その代わり裏切ったら容赦しないからね」
フィーロから一瞬だけ笑顔が消えた。
「わかってるよぅ」
アクロスはフィーロを見て言う。
「好きなだけ食べて」
フィーロは笑顔に戻っていた。
「あざーす」
アクロスは相当お腹が空いていたのか一時間は食べ続ける。
「あら、来てたの」
マリアがティータイムにやって来た。
アクロスを見つけて言う。
「死のウイルスに感染する前に来たよ。でも確認して欲しいんだ。本当にまだ感染していないか」
アクロスはマリアの前に立って言った。
「感染してたらとっくに死んでるわよ」
そう言いながらもマリアはアクロスの耳を引っ張って研究室の隔離室へと移動する。
アクロスの要望通りに死のウイルスに感染したか否かを研究者達に確認させた。
マリアはすぐに食堂に戻る。
「アクロスが死のウイルスに感染してたら貴方も死にかねないのよ?」
マリアがフィーロに言った。
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