第8話

「バナナジュース?」

フィーロはコップとにらめっこをした形になる。

ジュースは薄い緑色をしていた。

「色々入ってるみたい」

ナナシは微笑う。

「表情が豊かになったね」

「え?」

フィーロの言葉にナナシは止まった。

「良い事じゃん」

フィーロは嬉しそうに微笑っている。

ナナシは黙ってしまい、フライドポテトを食べ始めた。

この時マリアは研究室に移動。

聖祈教の動きを確認する。

信者の人数は増えているがこれと言って大きな動きは無かったがマリアにとってはそれが不気味で仕方が無かった。

「嵐の前の静けさじゃなきゃ良いんだけど…気持ち悪いわね」

マリアは不安に圧し潰されそうになる。

場所は変わってとある廃墟の中。

そこにも研究室らしき場所があった。

「主よ、悪魔の子が我等の物とは異なる解毒剤を入手した様です」

青年が革の豪華な椅子に座った青年に言う。

『主』と言うのが彼の通称らしい。

「流石はフォックスドッグ。これからも情報を集め続けておくれ」

主はフォックスドッグと呼んだ青年に札束を渡した。

「あと三つこれをくれればどうやってその解毒剤が作られたのかも報告出来ますが」

フォックスドッグは不敵に微笑む。

「額を決めるのは僕だよ、フォックスドッグ。先に情報を寄越すんだ」

主はフォックスドッグを見た。

「仕方無いですねぇ。ケチらないでくださいよ」

そう言いながらフォックスドッグは主にRh-nullの持ち主をフィーロが見つけてその血を使って血清を作る事に成功した事を伝える。

「捕らえるか」

主は何とも言いにくい表情でそう言った。

「この話をタダでと言うならこちらにも考えがありますぜ、主よ」

フォックスドッグは再び不敵に微笑う。

「ほら」

主は札束を五つフォックスドッグに渡した。

「これからも宜しく」

フォックスドッグは主の前から立ち去る。

「狐と犬か。良く言ったものだ」

主は微笑った。

「ドクター」

主は奥で両手で耳を塞いで蹲っている青年に近付く。

青年は主を怯えているのだろうか。

逃げて壁にピタりとくっついた。

「君の作ったウイルスは素晴らしい。名前の無かった僕を神にしたのだから」

主はドクターと呼ばれる青年に不敵な笑みを浮かべたまま顔を近付ける。

「僕はもう誰も死なせたくない」

ドクターは言った。

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