第7話

フィーロは隔離室に死のウイルスの感染者を入院させていて、その者達にその血清を射ってみる。

正しくはフィーロに仕える研究者達が射ったわけだが結果はすぐに出た。

高熱が出て魘されるものの熱が下がった時には死のウイルスの殺人的効力は無くなる。

ちなみに死刑囚で試した所、ナナシの血液を直に輸血した時には血流が強くなり過ぎて血管が破裂してしまったらしい。

これは死のウイルスに感染していない者の場合の話で、死のウイルスに感染していない者でも癌などの患者からは癌が小さくなったと言うデータが取れた。

一週間後には癌が消えたと言う。

血清を射った人間からも死のウイルスが消えた。

新たな感染も見られない。

「末期癌の人も助けられるかもしれないねぇ。これは沢山の血が必要になる」

集められたデータを見ながらフィーロは食事をしながら言う。

「貧血になる」

マリアは言った。

「どうしたら血が足りるかな」

「ナナシのクローンを作る?」

「その前に蠅を退治する」

「戦う気?」

「蠅を退治すればウイルスは生まれないかと思ったんだけど」

「ベルゼブルか」

「そう」

フィーロとマリアは話し続ける。

ナナシはマリアが作った特製ジュースを黙って飲んでいた。

話についていけていないのである。

「ナナシ、他人事じゃないのよ?」

マリアがナナシを見た。

「今の俺は二人に従うしかない。何をすれば良いかもわからないわけだし。二人が俺を殺さないと思ってるのは甘い考えなのかな」

ナナシはマリアだけでなくフィーロも見る。

「んにゃ。そこは正しい」

フィーロは否定しない。

「だったら俺は二人に従うしか今は無いでしょ?」

ナナシはまたジュースを飲み始めた。

「ジュースばっかり飲んでるね」

フィーロが半分呆れながらナナシに言う。

「美味しいよ」

ナナシはかなりこの特製ジュースを気に入っているらしい。

「僕も飲みたい」

フィーロはマリアを見た。

「今日はもう無いから明日ね」

マリアはフィーロをあっさりとあしらう。

「冷た~い」

フィーロは言った。

「ナナシがおかわりしたくても今日は無いわよ」

そう言うとマリアは食堂を出て行く。

ジーーーッ…。

フィーロはナナシを見た。

「飲みかけだけど要る?」

ナナシはフィーロにコップに残ったジュースを差し出す。

「飲む~っ!」

フィーロは喜んでナナシの飲んでいたジュースを飲んだ。

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