第3話

「あの人、手に入れるのは好きだけど手に入れた物を失うのは大嫌いなの。あたしも何度か死のうとしたけど全部阻止されたわ」

マリアは言う。

「変わってるね」

ナナシはつい微笑った。

そこへフィーロがやって来る。

「お腹空いた。待ち切れないから迎えに来ちゃった」

フィーロは笑顔で二人に言った。

「一人で食べてれば良いのに」

「ヤダよ。折角独りじゃなくなったのに」

「ったく」

マリアはフィーロに呆れる。

「食事出来てるから早く行こうよ~」

フィーロはナナシの腕を掴んでぶらんぶらんと勢い良く揺らした。

ナナシは目が点になっている。

「食事、付き合って」

マリアがナナシに言った。

「はぁ」

ナナシはマリアとフィーロに連れられて食事の間へと移動する。

そこには沢山の種類の食材が調理されて用意されていた。

「好きなだけ取って食べれば良いんだ。お腹いっぱいになったら残して良いよ」

フィーロはフォークでソーセージを刺すと笑顔でそれを食す。

「あ、僕の敷地内に住んでる人には食事もちゃんと提供してますから。この残ったのは食べかけだから残飯係にあげるけど」

フィーロはイチゴを手に取り、食べた。

「あたし達のルールは生きる事と遠慮しない事。その二つ位ね」

マリアもチキンを手にして食べ始める。

「亡くなった仲間の分も食べて生きてね」

マリアは続けた。

そう言われたナナシはがつがつと色々な物を食べる。

しかしすぐに食べるのをやめてしまった。

「お腹痛い」

ナナシは椅子に座ってお腹をさする。

「急に沢山食べたからお腹が驚いちゃったのね。あたしも最初はそうだったなぁ」

マリアは昔の自分を思い出して笑った。

「ゆっくり食べれば良かった」

ナナシは後悔する。

「吐かないだけましだわ」

マリアは言った。

「それが一番勿体無い」

ナナシはテーブルに顎を置いて言う。

「ここにある物は逃げないから」

フィーロは鼻歌を歌いながら食事を楽しんでいた。

「そう言えば残飯係って…」

ナナシはフィーロを見る。

「ハイエナのイートの事。逢いに行く?この部屋には入れない様にしてるんだ」

フィーロはハイエナを飼っているらしい。

「今は動きたくない」

ナナシはまだお腹を抱えて丸まっていた。

「イートも逃げないからいつでも逢いに行けるよ」

フィーロはまた鼻歌を歌いながら食事をし始める。

そんな時マリアの服の中から何かのアラーム音が。

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