第2話 職業
この世界では、五歳になると教会で
まあ、職業とは言っても転職も可能である為、最初に授かった職業が自分に向いていると言うだけで、必ずしもその職業であり続け無ければいけない訳ではない。
むしろ、様々な
そして、今日。俺は五歳の誕生日を迎えた。そして、それは幼馴染のフィルマも一緒である。
「何だか緊張するね……」
「そう?肩の力脱いていたほうが、俺はいいと思うけど」
教会の前でガチガチになっているフィルマにそう言いながらも、俺も少し緊張していた。
これから行うのは前世とは明確に違う、異世界特有のものであるのだ。これまで過ごしていた中では魔物や魔法が存在するとは知っていても、田舎の村である為、実際に目にした事は無いのだ。
緊張半分、興奮半分の心持ちで教会の大きな扉を開ける。と、こじんまりとした聖堂に村唯一の神父さんがニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべて立っていた。
「いらっしゃい。セイル、フィルマ。職業を授かりに来たんだね?」
「はい」「はい……」
俺ははっきりと、フィルマはボソボソと、正反対ながらも異口同音に頷く。その様子を見た神父さんはニッコリと更に笑みを深めて、「こちらへおいで」と手招きをする。
俺の服の裾を掴むフィルマの手を取ると、神父さんのところへ向けて一直線へ歩いていく。
「この石板に手を置いて。そうしたら職業とステータスを授かれるから」
そう言った神父さんの指し示した台の上には、新書サイズの石板がデンと置かれている。
隣に立つフィルマを見ると、視線がぱっちりと合った。
「先にやるか?」
「……うん。やっても良い?」
「どうぞどうぞ」と一歩下がると、フィルマは「ありがと」と言って俺とは逆に一歩前に出る。
そして、フィルマが恐る恐るとだが石板に触れると、石板がぼんやりと光り……もとに戻る。
「……」
「フィルマ、これで職業は授かれましたよ」
「……えっ、今ので終わりですか?」
「ふふっ、肩透かしでしたか?」
微笑ましそうな神父さんにフィルマは恥ずかしそうに「……はい」と消え入りそうな声で返事をする。
「取り敢えず、どんな職業に就いたのか教えてくれよ」
「あ、うん。えーっと……」
そう言って神父さんれへと視線を向けるフィルマ。視線を向けられた神父さんは苦笑しつつも「ステータスオープンと言えば目の前に出ます。他者に見せたい場合は、出てきたステータスに触れて他者に見せようと念じれば良いのです」と、丁寧に教えてくれた。
「……ステータス、オープン」
フィルマはそう唱えると、すぐにビクッと肩を揺らした。……ステータスが出て来て驚いたんだな。
それが恥ずかしいのか、軽く咳払いをした後中空に手を置くようなジェスチャーをした、次の瞬間。フィルマの前に白……というよりかは乳白色の光の板が出現した。
「それがフィルマのステータスか。……ちょっと見せて」
「あ、うん」
許可を貰い、フィルマの横からステータスを覗き込むと、
―――――――――――――――――――――――
NAME:フィルマ
RACE:
JOB:剣聖 Lv.1
SKILL
『皿洗いLv.2』『料理Lv.2』『剣術Lv.1』『剣技Lv.1』『身体能力強化Lv.1』『人剣一体』『剣神の加護』
―――――――――――――――――――――――
「こ、これは……」
「何か凄まじいな」
幼馴染のチートっぷりに俺は乾いた笑いしか出なかった。何だよこれ、剣聖って。まだまだレベルが低いが、これから更に成長するとなると、ヤバいだろ。
「……次、俺行きます」
驚きで固まる神父さんを横目に俺も石板に触れる。そしてすぐさまステータスを開くと
―――――――――――――――――――――――NAME:セイル
RACE:
JOB:生産者 Lv.1
SKILL
『農耕Lv.2』『畜産Lv.1』『養殖Lv.1』『鍛冶Lv.1』『細工Lv.1』『木工Lv.1』『彫刻Lv.1』『描画Lv.1』『裁縫Lv.1』『調合Lv1』『醸造Lv.1』『製品Lv.1』『料理Lv.1』
―――――――――――――――――――――――
……何だこれ?
「セイル、セイルのはどんなのだったの?」
「ん、ああ。こんな感じだったんだが……」
尋ねてきたフィルマに返事をしつつ、ステータスを開示して見せると、
「これは、見たことの無い職業ですね」
「えっ!?」
神父さんの言葉に、思わず喜びそうになる。それなら、もしかしてフィルマの剣聖に匹敵するのでは、と。そう感じたからだ。しかし、
「この名前とスキルからして、恐らく生産職の複合ですね。……まあ、器用貧乏な職人になりそうな職業ですね」
「……へ」
続けられた言葉に、俺は乾いた笑みすら浮かべられなかった。
「器用貧乏って……」
「普通の生産職はスキルと職業が一致している為、技術が伸びやすいのですが、この生産者は出来る事が多すぎる為に、逆に器用貧乏に陥りやすいと思います。……似特定の属性に特化した火魔道士と様々な属性を扱える魔道士という職業同士が戦った時、勝ったのは火魔道士だった。という話がありまして、セイルの生産者もこの魔道士という職業と同じなのでは、と思うのですよ」
神父さんの言葉に思わず膝から崩れ落ちる。それに驚いたフィルマに「だ、大丈夫!?」と声を掛けられるも返事をする余裕が俺にはなかった。
―――――――――――――――――――――――
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