第二章


第2章 最初の仲間


洞窟の中で、アレンとセーラは焚き火を囲んでいた。セーラが魔法で火をつけたのだ。揺らめく炎が、二人の顔を照らす。

「改めて、自己紹介をしましょう」

セーラが切り出した。

「私はセーラ。王都の魔法学校に通う学生です。専攻は攻撃魔法と回復魔法。魔物の調査でこの森に来ていたのですが、あんなに強い魔物に襲われるなんて…」

セーラは、少し悔しそうに言った。

「僕も、まさか自分が勇者の末裔だなんて、信じられません」

アレンは、自分の剣を見つめながら言った。

「でも、あなたの剣は、間違いなく伝説の勇者の剣です。私も、文献で見たことがあります」

セーラは、アレンの剣を指差した。

「その剣には、特別な力が宿っているはずです。きっと、あなたの力になってくれます」

「そうだといいんだけど…」

アレンは、まだ自信が持てない様子だった。

「魔王を倒すためには、仲間が必要です。私も、あなたと一緒に旅をさせてください」

セーラは、真剣な眼差しでアレンを見た。

「セーラ…」

アレンは、セーラの言葉に心を打たれた。

「ありがとう。心強いよ」

アレンは、笑顔で答えた。

「まずは、王都を目指しましょう」

セーラが提案した。

「王都には、魔法学校の先生や、王宮の騎士団など、力になってくれる人がいるはずです」

「わかった。でも、どうやって王都へ行けばいいんだ?」

アレンは、地図を持っていないことに気づいた。

「大丈夫。私が案内します」

セーラは、自信満々に言った。

「私は、地理が得意なんです。それに、簡単な転移魔法も使えます」

「転移魔法…!?」

アレンは、驚きの声を上げた。

「ええ。でも、長距離の転移はまだ練習中なので、少しずつ進むことになりますが…」

セーラは、照れくさそうに笑った。

「それでも、すごいよ!」

アレンは、セーラの能力に感心した。

「まずは、この森を抜ける必要がありますね」

セーラは、地図を広げた。

「森を抜けた先に、小さな町があるはずです。そこで、旅の準備を整えましょう」

「よし、出発だ!」

アレンは、立ち上がった。

こうして、アレンとセーラの、二人だけの旅が始まった。


翌朝、アレンとセーラは洞窟を出発した。森の中は、朝日に照らされて、神秘的な雰囲気を醸し出している。

「それにしても、すごい魔力ですね」

セーラが、アレンに話しかけた。

「あなたの魔力は、普通の人間とは比べ物になりません。きっと、勇者の血を引いているからでしょう」

「魔力…?」

アレンは、自分の体を見回した。

「自分では、よくわからないんだけど…」

「これから、少しずつ魔力の使い方を覚えていく必要がありますね」

セーラは、優しく微笑んだ。

「私も、できる限り教えます。一緒に、強くなりましょう」

「うん…!」

アレンは、力強く頷いた。

森の中を歩いていると、再び魔物が出現した。今度は、巨大な蜘蛛のような姿をしている。

「アレン、気をつけて! 毒を持っているかもしれません!」

セーラが叫んだ。

アレンは、剣を構え、魔物に立ち向かった。しかし、魔物の動きは素早く、なかなか攻撃が当たらない。

「くそっ…!」

アレンは、焦りを感じ始めた。

「アレン、落ち着いて!」

セーラが、魔法を唱えた。

「フレイム!」

セーラの杖から、炎の玉が放たれ、魔物に命中した。魔物は、炎に包まれ、苦しそうにもがいている。

「今です!」

セーラが叫んだ。

アレンは、その隙を見逃さなかった。渾身の力を込めて、剣を振り下ろす。

「はあああああ!」

剣は、魔物の体を真っ二つに切り裂いた。魔物は、断末魔の叫びを上げ、消滅した。

「やった…!」

アレンは、息を切らしながら、立ち上がった。

「ナイスアシスト、セーラ!」

アレンは、笑顔でセーラに言った。

「いえ、あなたこそ、見事な剣捌きでした」

セーラも、笑顔で答えた。

二人は、互いに協力し、魔物を倒したことで、絆を深めた。


その後も、アレンとセーラは、何度か魔物に遭遇したが、二人の連携によって、順調に森を進んでいった。

アレンは、セーラから魔法の基礎を教わり、少しずつ魔力をコントロールできるようになってきた。セーラも、アレンの剣術から学び、自分の戦い方を磨いていた。

「そろそろ、森を抜けられそうですね」

歩き始めて数時間後、セーラが言った。

「前方に、開けた場所が見えます」

「本当だ…!」

アレンは、目を凝らした。木々の間から、明るい光が差し込んでいる。

二人は、足早に森を抜けた。そこには、小さな町が広がっていた。

「ここが、リバーサイドの町ですね」

セーラが、地図を確認しながら言った。

「まずは、宿屋を探しましょう。それから、旅の準備を整えなければ」

「そうだな」

アレンは、頷いた。

町の中に入ると、活気のある雰囲気が二人を包み込んだ。道行く人々は、皆、笑顔で、楽しそうに話をしている。

「なんだか、エルム村とは全然違うな…」

アレンは、辺りを見回しながら言った。

「王都に比べれば、まだまだ小さな町ですが、それでも、エルム村よりはずっと賑やかですね」

セーラが、笑いながら答えた。

二人は、町の中心部にある宿屋を見つけた。宿屋の看板には、「旅人の宿」と書かれている。

「ここにしよう」

アレンは、宿屋の扉を開けた。

中に入ると、宿屋の主人が、笑顔で二人を迎えてくれた。

「いらっしゃい。旅の方かい?」

「はい。二人で泊まりたいんですが」

アレンが答えた。

「ああ、いいとも。ちょうど、空き部屋がある」

宿屋の主人は、二人を部屋に案内してくれた。部屋は、清潔で、窓からは町の景色が見渡せる。

「ここで、少し休んでから、買い物に行こう」

アレンは、セーラに言った。

「ええ。武器や防具、食料など、必要なものを揃えなければ」

セーラは、頷いた。

二人は、荷物を置くと、早速、町へと繰り出した。


リバーサイドの町は、小さいながらも活気があり、様々な店が軒を連ねていた。

アレンとセーラは、まず武器屋を訪れた。アレンは、自分の剣を研ぎ直してもらい、セーラは新しい杖を購入した。

「この杖、とても魔力を感じます…!」

セーラは、新しい杖を手に取り、嬉しそうに言った。

「それは良かった」

アレンも、自分の剣がより鋭くなったことに満足していた。

次に、二人は防具屋を訪れた。アレンは、革の鎧を、セーラはローブを購入した。

「これで、少しは防御力も上がったかな」

アレンは、鎧を身につけて言った。

「ええ。でも、油断は禁物ですよ」

セーラは、ローブを羽織りながら言った。

最後に、二人は食料品店を訪れた。パンやチーズ、干し肉など、日持ちのする食料を買い込んだ。

「これで、しばらくは食料の心配もなさそうだな」

アレンは、荷物を抱えながら言った。

「ええ。でも、節約しながら使わないと」

セーラは、財布の紐を締めながら言った。

買い物を終えた二人は、宿屋に戻り、旅の準備を整えた。

「いよいよ、王都へ向けて出発ですね」

セーラが、地図を広げながら言った。

「王都までは、ここから歩いて3日ほどかかるはずです」

「結構、遠いな…」

アレンは、少し不安そうな表情を浮かべた。

「大丈夫。二人で力を合わせれば、きっと乗り越えられます」

セーラは、アレンの肩に手を置き、優しく言った。

「…そうだな」

アレンは、セーラの言葉に励まされ、笑顔を取り戻した。

翌朝、アレンとセーラは、リバーサイドの町を後にした。

空は晴れ渡り、二人の前途を祝福しているかのようだ。

「さあ、行こう!」

アレンは、力強く一歩を踏み出した。

セーラも、アレンに続いて歩き出した。

二人の、長く険しい冒険の旅は、まだ始まったばかりだ。



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