第11話

「私、何だったんだろう」



 やはり、言葉は無かった。


 始まりも、終わりも。


 今も、何も無いのだろう。



「エマちゃん」



 私は彼の笑顔以外を知らない。



「エマちゃん」



 いつも同じ表情で、人形のような瞳を細めて、口角を綺麗な角度で持ち上げるだけの人だった。



「エマちゃん」



 人間味が無い、打っても全く響かないような人だった。



「―――そんなの、興味無いよ」



 もしかしたら、トーマの中に似たような何かを見ていたのかもしれない。


 いつも飄々としていて。

 誰に何を言われても全く気にしない素振りで。

 そして、切り捨てるのが上手い。


 どこか人間らしさを感じさせない、自分の時間軸で生きている人。

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