第12話

「そうだね」



 トーマがどう受け答えをするかは既に予想が付いていて、想像とそうたがわない回答に小さく笑った。



「でも、」



 しゃっとレールが音を立てた。


 穏やかな沈黙が、薄暗い闇を侵食する。



「行ってみたいな、とは思うよ」



 視界が全て、閉ざされた。



「フランス」



 何も見えない。

 見えなくなった。


 自分から解いた目隠しに、今度はトーマが蓋をした。



「フランス?」



 ついに見るものが無くなって、そこで漸く後ろを振り返る。

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