嫉妬

第2話

奴に彼女が出来たと知ったのは、オレが帰省した正月のことだった。

大学2年で、将来は父の会社に入社かな…でもオレ、こういう仕事向いてないよな、とかぼんやり考えていた時期だった。


オレにしては珍しく早く起きて、新聞を取りに外に出た時。

「あ」

間抜けな声だったと今でも思う。

何故、こんな声をあげたかというと。オレの家の前を中学、高校と仲良かった友達が横切ったからだ。

県外の大学に入ってからもオレが帰省した時はつるんでいた奴らと一緒に会うという間がらだ。

今日、まさに会う約束をしていたわけだが。

……朝っぱらから会えば「よう!」とか普段は声を掛けるのだが、奴は一人ではなかった。

隣りに女の子がいた。だから間抜けな声をあげてしまったのだった。

チッ、朝帰りかよ……。

オレの間抜けな声が聞こえたのか、奴――真(まこと)はこっちを見た。

「ああ、将、おはよ~!」朝帰りの所を見られて気まずそうにするわけでもなく、真は声を掛けてきた。しかも照れ臭そうな顔をして。

なんだかその顔が気に入らなかった。

「おはよ…、彼女?」

そんな態度を出さないように、オレは挨拶をした。

あはは、と真は笑う。

「ああ、うん、そう。…最近付き合いはじめたんだ。今日会った時にみんなに言おうと思ってさ。びっくりさせようと思って。なんせ、彼女いない暦20年だからな、僕は。…みんなには言うなよ? まさか、遅起きな将に見られるとは思わなかったな」

頭をかきながらいう。

本当に幸せそうでよかったな。

「あはは、いわねぇって! オレも驚いた顔してやるからよ、安心しろよ。…ホラ、彼女待ってるぞ、行ってやれよ」

オレは右手をひらひら振った。

こちらを見ていた彼女はオレと目が会うと軽く会釈をした。オレも会釈をする。

いい子そうじゃん。

「じゃあな、今日の夜な」「ああ」

オレは真を見送り、新聞を新聞受けから乱暴に出し、家に入り、玄関に投げ付けた。

……あいつだけは、彼女なんか出来ないと思っていたのに。

優しくて思いやりがあって。気をくばれて。

……恋愛感情であいつを好きだ。

いつのまにか、好きだったのに。

オレは男だから、告白なんて出きっこない、と思っていた。だから会って話せるだけでそれだけでいいと思ってた。

けど、違ってたんだ。

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