再録小説

キス。

第1話

「気持ち悪い」

それが、俺が康司とキスした時の感想だった。

唇が離れて、そんなことを言ったら、康司はすごく傷ついたカオをした。

苦笑いをする。

「………ごめんな」

康司は謝って両手でカオを隠す。

泣きそうなのかなと思う。

「やっぱり、俺は男を好きになれねぇよ。康司は好きだよ? けど、それは友達として、で」

何、言い訳してるんだ、俺。

康司はしゃがみ込んだ。

「そういってもらえれば、たす…助かるよ…。今まで通り、ともっ…友達として接してくれ、…る?」

泣き声になりながら、聞いてくる。

俺より身長のある康司が、小さくみえた。

しゃがんでるけど、まぁ、ガタイは俺よりいいわけだし。

俺はしゃがんで康司の頭を撫でた。

康司が、驚いたように少し動いた。

かまわず、ゆっくり髪を梳く。

「あたり前じゃないか」



俺らは夕方の公園で、あたりが薄暗くなるまでそのままでいた。

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