第44話

その場の、感情に流されてるんだ、と思った。

寂しくて仕方ないのかな、この人。

いまの状況だったら猫にだって犬にだってキスをするに違いない。

だから、言った。

「ダメです」

「え~、いいじゃんか?」

「どこからその肯定が出てくるのか謎ですが、僕は男ですよ?」

「俺はゲイだよ」

……、そうだったのか。

まあ、悟志を好きなんだからそうなんだろうな…。

「だったとしても。その場の勢いでしたら後悔しますって」

「いいよ、後悔したって。慰めてくれよ…」

声が震えている。泣いてるんだろうか。

それを聞くと、この人を楽にしてあげたい、という気持ちが起こった。してもいいかなという気になってくる。

「分かりました、それで気が済むのなら」

言って、目を瞑る。

そういえば、男とキスするのって初めてだよな。

最後にキスしたのはいつだっけ……。

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