第34話

「あれ? 何赤くなってんの?」

渉の後ろから有也がひょこっと顔を出した。

その表情は不思議そうにオレを見ている。

首、気づいてないらしい。

…ほっとする。

「――なんでもないよ」

「そか?」

有也は気にならないのか追求してこなかった。そのまま茶の間に戻る。

オレもそれに続く。

渉の横を通り過ぎようとしたとき、彼は囁くような小さな声で言った。

「有也はそういうの。あんま気づかないよ。そんな所にあれば、なおさら。まあ、気づいたとしても何かに刺されたのかな?くらいにしか思わないし」

――。

ちょっとこの言葉にはムカついた。

ので黙って通り過ぎて有也の隣りに座った。

あ、れ?

いい匂い…。

振り返ると渉がお盆にシチューを乗せて茶の間に入ってきた。

「さてと。直気君も起きたことだし、夕食にしよう。今日は珍しくたくさん野菜を入れたからな。じっくり煮込んだし、たくさんくえよ?」

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