第9話

「えと。オレは直気っていいます。有也くんが言った通り、記憶がぷっつり切れてて今までのこと、憶えていません。迷惑とかかけるかもしれませんが、宜しくお願いします」

なんか、この人を前にして言うと緊張する……。

「こちらこそ、よろしく」

近づき、握手を交わす。

渉の顔が間近にある。

……あんた、やっぱり、綺麗な人だな。


さっきまで、途方にくれていたオレが嘘のようだ。

記憶が無いということは、オレに恐ろしさ、怖さをあたえた。

でも。

この二人によってそれが和らいでいく。

なんとかなりそうな気がしてくる。

たとえ、記憶が無くても。

いつか、戻ってくるような気がしてくる。

さてと。

がんばるか。

こうして、オレの記憶喪失な日々が始まる。

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