root_unknown

梨絵は、記録係の権限を最大限に活用し、

システムの最深部へとアクセスを試みた。


【アクセス要求:root_unknown】

ステータス:アクセス拒否

理由:筆記者の記録により保護されています。


「筆記者の記録……?」


梨絵は、久坂が残したログを再確認した。

そこには、彼が“最初に書き換えられた存在”についての断片的な記述があった。


「彼女は、最初の“記録係”だった。

彼女の記憶が、すべての起点になっている。」


梨絵は、自分の記憶を辿り始めた。

しかし、幼少期の記憶が曖昧で、特定の人物や出来事が思い出せない。


「私の記憶も、誰かに“書き換えられた”のか……?」


数日後、梨絵の端末に一通のメッセージが届いた。


差出人:unknown

件名:記憶の再構築

本文:あなたの記憶は、あなた自身が書いたものです。


そのメッセージとともに、

彼女の過去の記憶を再現した映像ファイルが添付されていた。


映像の中で、幼い梨絵がノートに何かを書き続けている。

その内容は、現在のシステムに存在する“記録係マニュアル”と酷似していた。


「まさか……私が“root_unknown”……?」


梨絵は、自己の存在に対する疑念と恐怖に襲われる。

しかし、彼女は決意する。


「たとえ私が“起点”であっても、

今の私は、過去の私とは違う。

私は、記憶を取り戻し、

すべてを正すために“書き直す”。」


彼女は、新たなファイルを開いた。


タイトル:記憶の再構築

内容:すべての記録を、記憶に基づいて再編成する。


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