第625話

お仕事で、お休みがとれるか分からないけど、誘う前に兄貴に許可を貰わなくてはならない。



「……青沼、か。」



一気に不機嫌な顔になった兄貴はキッチンに戻ってしまった。

後ろ姿が、怖い。

兄貴が、あからさまに不機嫌な顔をすることは稀だ。



「怒ってる?」



『……んー。』



「何があったんだろう。」



『……。』



それは、俺も気になっていた。

兄貴はひなちゃんのことが好きではないらしい。

でも、二人はその……色々あったわけだし。

気まずかったかな。

もっと気を回せば良かった。

ご飯を食べ終わって、姫が灰原たちの所にも行く約束を果たすために見送った。



「……仁、いいよ。」



『ん?』



「青沼。本人の都合が合えばね。」



ぶっきらぼうに、それだけ言うとまたキッチンに戻って行った。

カウンターのところへ向かい、兄貴の顔色を窺う。



『……ありがと。』



「いいよ。」



『……兄貴は、ひなちゃん嫌い?』



俺の問いかけに、顎に手を当てて考え始めた。

ゆっくりと首を振ると、カウンターに出てきた。



「嫌いじゃないよ。嫌いになるほど、青沼を知らないからね。仁と仲良くしてくれているし、一人増えても変わらないよ。女の子たちの部屋が狭くなるくらいだね。」



爽やかな笑顔で、俺の頭を撫でるとにっこりと笑顔を作った。

兄貴の言葉に甘えることにしよう。



『……ありがと。』



そんな感じて兄貴から許可を貰い、直ぐにひなちゃんを誘った。

丁度連休だったひなちゃんが承諾してくれて、青沼姉妹の参加が決まった。

初参加のひかも、ひなちゃんがいることでリラックス出来るだろう。




──

────



少し不安そうな顔をするひかの頭を撫でると、俺を見つめるひか。



『……楽しみだね。』



「っ、うん!」



パアッと笑顔に変わったひかの頭をもう一度ポンポンと撫でていると、目的地についてしまった。

ひかのお陰で、目の前を歩く女王様二人の存在が和らいだ。

そう、思っていた。



「これは?」



「もっと胸元にはフリルが、」



「色は黒でしょ。」



「え!可愛い色も似合うと思うよ。これとかどうかな?」



「こっちよりこっちじゃない?」



目の前の光景に白目を剥く俺は、端から見たら滑稽だろう。

こうなると、なんとなく予想がついていた。

覚悟もした。

でも、まさか……ひかまでもが俺の水着を決め始めた。

しかも、あの二人とやりあっている。

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