向日葵の盲点

望乃奏汰

🌻

私は、先生には他の方と喋ったりして欲しくないです。あんな、ただ迎合してヘラヘラと耳ざわりのいいことを言うだけのような人たちと。

結局、そういった人達にチヤホヤされるのが嬉しいんじゃないですか。見損ないました。


私は先生には孤高であってほしいのです。

孤独であってほしいのです。

誰とも馴れ合わない、そういう高潔で、泡ひとつない冷たい氷のような、生き物ひとついない海のような、星ひとつ瞬くことのない宇宙の底のような、一切混じり気のない美しい精神であってほしいのです。


先生のその、暗く深い透き通った部分を見つけられるのは私だけです。

それは太陽の中に黒点を見出すように。

ほかの人たちはきっと、その暗く冷えきった美しさには気付かずに、ただ眩しい光に見とれているだけなのです。


だからあんな、俗っぽくて下らない人達とは1ミリだって関わってなど欲しくないです。

なんですか「ありがとうございます。」なんて、あの人たちは先生からそういう言葉を掛けられて舞い上がって調子に乗っているだけです。自分のことを先生の親しいお友達か何かだと勘違いされてるんじゃないですか。ただの取り巻きのくせに。


私ですか? 私なんかが先生にこうして何かを言うことすらおこがましいのです。私は先生を尊敬しています。

本来であれば、先生の視界にだって入りたくありません。先生の目に映る世界に私のような卑しい人間は存在していて欲しくないのです。

あぁ、浅ましい。自分自身が一番浅ましい。


私は先生が最も嫌うような種類の人間だと思います。分かります。先生は私のようなこうして被害者意識ばかり強くてうじうじとしてひねくれた心持ちの人間なんてお嫌いでしょう。先生じゃなくても、私のような人間のことが好きな人間なんて、この世に一人もいないでしょう。


だから、他の人に向けるような、そんな顔でこちらを見ないでください。私はあれらとは違うのですから。


だから、今までだって一度もこちらから先生に声をお掛けするなんてことはありませんでした。これから先も未来永劫ないでしょう。

私はあいつらとは違います。慎ましくただ、先生のことをそっと静かに見つめていたいだけなのです。


好意というのは暴力と同義であることを私はよく理解していますから。自分の好意が他人に無条件で受け入れてもらえると信じている奴らと私は違います。

好意を他者に向けるというのはつまりは刃物を突きつけることと何ら変わりません。

それを分からない人間があまりにも多すぎます。


でも本当は分かっているのです。

自分が差し出しているものが花束であると心から信じることのできる人間こそが愛されるに値するのだと。

それを振り払われる可能性のことなど全く考えたことがない愚直な人間にしかあなたはその笑顔を向けることはないのだということを。


私の手に握られているのは刃物以外の何物でもありません。花束を編んだつもりでも、この手の中にあるのはいつでも刃物です。

勿論こんなものはとてもではありませんが差し出すことなどできません。


私はただ、それを抱きしめて、血塗れで痛みに耐えながら押し黙るだけです。


花束が、よかったな。

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