第2話 襲ったりしないから!
サブスクでも配信されてない古い曲を聴きたくて“OFF”を何軒かハシゴして見つけたCDが100円だったのが、なお“勝った感”をUPさせてオレは駅を出た。
土曜日を潰して交通費もかかったけどこの満足感は大きい!
そしてこの時間ならスーパーのお弁当は割引になってるはず!
と言う訳で、オレは首尾よくゲットした明日の昼までの食料(半額のお弁当、お惣菜)でエコバックをパンパンにしてマンションまで帰って来た。
と……ドアの前に人が蹲っているのが見える。
「何だ?! 髪は長いけどボサボサ……グレーのスウェットの上下だし……裸足?! 女の人っぽいけど、顔見えないし、レゲエのオジサンかも?! ヤバいなあ……」
恐る恐る近付くと、ガバッ!と身を起こされた。
まったく見覚えの無い、度の強い黒メガネの女の人だ!
「良かったぁ!!! もぅ~!!誰も帰って来ないし!! ホント!どーしよかって!!とにかく早く開けて!!!」
「えっ?!えっ?!」
「早く!!!!! ピンチなんだから!!!」
まるで野獣の様に抱きつかれて怒鳴られたんだけど、一瞬感じた抱き心地は恐ろしく柔らかい。
とにかく彼女はオレの手から鍵を引ったくってドアを開け“勝手知ったる”みたいにトイレへと飛び込んだ。
オレは茫然としながらも“エチケット”を守れる範囲の距離を取ってじっと身構えていた。
やがてトイレから出て来た彼女は洗面所で手を洗い、その手をスウェットで拭いながら声を張り上げた。
「ねえ! 雑巾とロープを貸してくんない?!」
「へっ?!」
「無いの?!」
「いや、雑巾はあるけど、ロープはあったかな? つうか! 見も知らぬ人からこんな事言われたりされたりする筋合いないんだけど……」
「え~っ?!佐藤クン酷い! 私達同じクラスじゃん! それとも何?! キミは見た目で人を判断するの?! 確かに今、制服は着てないけどさぁ~」
そう言われても『佐藤』って苗字は表札見りゃ分かるし、新手の“物取り”かもしれん!
オレがこんな疑いのジト目を向け、逡巡していると彼女はため息をついてメガネを外しチョイチョイと手招きした。
「襲ったりしないから」
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