お隣の天使様がダメ女だった件

縞間かおる

第1話 俺ら三軍と一軍の天使様

「なあ!テンナシ! そろそろオレを招いてくれてもいいだろ?!」


「やだよ!一晩中上映会やってお前のウンチク聞かされるに決まってんだから!」


 オレの名前は佐藤市朗(さとういちろう)!“一軍”の奴らから『点無し』とあだ名を付けられた!

座頭市ざとういち』の濁点が無いからと言う理由で。


 一方、今オレが話をしているコイツのあだ名は『キモタク』

 本名は“木村”だが、キムタクとは似ても似つかぬ“キモイオタク”と言うのがその理由だ。

 で、卓也がオレの住んでいるマンションへ来たがってるって訳だ。


 確かに今のオレは一人暮らしだが、それは海外勤務の叔父夫婦の留守を預かっているに過ぎず、学校からほど近いこの部屋が溜まり場になって、近隣の迷惑にでもなったら叔父夫婦に合わせる顔がない。

 杞憂だと笑われるかもしれないが、実はそれ相応の理由があるのだ!


「まあいいや! “嫁”が今日も慈愛溢れる微笑みをオレにくれたから!」


「また天使様の話かあ~ 天使様を“嫁”呼ばわりしてるのが一軍の連中の耳に入ったら、お前シメられるぞ!」


「どんな迫害を受けようとも嫁に対するオレの愛は不滅だ!」


「勝手に言ってろ!」


 この天使様とはクラス1……いや学年1の美少女“天海姫璃あまみめいり”の事だ。

 才色兼備だし性格もいい。

 クラスでの立ち位置は絶対的に一軍なのだが、誰にでも分け隔てなく優しい笑顔で接するところが天使様と呼ばれる所以だ。

 だが、陰キャのオレはこう思ってしまう。


「誰にでも分け隔てなく優しい笑顔する」と言うのは少なくともクラスメイト全員に興味が無いか、もしくは心の中に隠し事をしているんじゃないかって!

 本当は嫌いなヤツが居るとか絡むのがメンドクセーとか、はたまた張ってるとか……ハ・ハ、どこかの古びたマンガじゃあるまいし影番はねーか!

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