わたしが少女漫画の主人公だったら
@417shiina
思い出の花火大会で
わたしには幼馴染がいる。わたしより背が小さくて、泣き虫で、いつもわたしの2歩後ろをくっついてきた。
わたしの読んでる少女漫画では、主人公の女の子たちはみんな幼馴染たちと結ばれる。地味な女の子が学年一イケメンの男の子と幼馴染で、って話。地味な女の子って点はわたしと同じだ。
わたしの幼馴染は東京の大学に進学して、就職でこっちに戻ってきた。「久しぶりに花火大会観にいこう」だって。小さい頃はお互いの家族とみんなで一緒によく観に行ったっけ。
「懐かしいなー。昔よく家族みんなで来たよね」
わたしと同じこと思い出してる。
「途中ではぐれたことあったの覚えてる?親たちは必死に探しててさ。その間俺たちかき氷食ってたよね」
言われてみれば、そんなことあったかも。
中学生までは私のほうが背が高かったのに。高校生になったら同じくらいになっちゃって。今じゃ完全に見上げて話してる。いつ抜かされたんだろう。
辺りが暗くなるにつれ、人もどんどん増えてきた。人混みに流され、わたしたちの間に距離ができる。
もしわたしが少女漫画の主人公だったら。わたしはこの人と結ばれるのだろうか。学年一では全然ないけど、でも、かっこよくなったよなぁ。
友達でもない、恋人でもない、家族でもない。わたしたちって?
手をつないだら、わかるかな。この人混みを理由にしてそっと手をつないだら――
ドドン!ドドン!
2歩先を歩くあなたに手を伸ばそうとしたとき、花火が上がった。
「きれいだな」
振り返ったあなたの笑顔が花火に照らされる。
今までも、これからも、花火はきっときれいだ。
手はつなげなかった。つながなかった。
わたしも少女漫画の主人公かもしれない。でもきっと、わたしが主人公の少女漫画は幼馴染と結ばれるストーリーではないんだと思う。
友達でもない。恋人でもない。家族でもない。
わたしたちは幼馴染だ。
わたしが少女漫画の主人公だったら @417shiina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます