第29話

「はい、ぜひ!」



『……よかった』




柾木さんがホッとしたようにそう言うので、なんだか私の返事を喜んでくれてるような気がして私の方が赤面してしまった。




『行きましょうか』




そう言って、柾木さんがオススメのお店へと連れて行ってくれた。

そこはチョコレート専門店に併設されたカフェだった。

店内は平日にも関わらず女性客でいっぱいで、柾木さんはその風貌で視線を集めていた。




『先週も来たんですけど、カカオラテが美味しくて』



「……じゃあ、私もカカオラテにします」




"先週"も柾木さんはここに一人で来たのだろうか、もしかしたら、




『先週は男二人だったんで、なんとなく男だけだと入りづらくて。お付き合いいただいて良かったです』



「私もチョコレート好きなんで嬉しいです」




懸念していたような"誰か"とじゃなくて良かった。

それに好きなのはチョコレートだけじゃないけど、なんて少しだけそんな気持ちを添えて、"好き"という言葉を発した。




『僕も、好きなんです』




自分がそんな思いを込めていたから、柾木さんには他意はないのに、なんだかその言葉にドキドキしてしまった。

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