第20話

私とらなちゃんが歩く後ろから聞こえた、らなちゃんを呼ぶ声に二人で振り返る。




「はるとくん……」



「おはようっ」



「おはよ」



「おはようございます」



「おはようございます」




私がはるとくんのお母さんにあいさつをしていると、らなちゃんとはるとくんは手を繋いで歩き始めていた。

私とはるとくんのお母さんがその姿を見ながら歩いていると、らなちゃんはカバンからお手紙を取り出してはるとくんに渡していた。

はるとくんが嬉しそうに「ありがとう」というのを見て、らなちゃんも嬉しそうに笑顔を見せていた。





好きな人に好きですと言う事は大人になるにつれてだんだんと難しくなる。

それは恋愛だけじゃなくて、誰に対してもなのかもしれない。

らなちゃんを昨日見ていたら「ママ大好き」「パパ大好き」とたくさん伝えていた。

小さい頃は私も、母や父に大好きとよく伝えていた気がする。いつの頃からか恥ずかしいとか、拒否されたらとか考えるようになってしまった。





あんなに純粋にらなちゃんのように気持ちを伝える事が出来るだろうか。

今はまだ出来ない。

怖いのだ、あの場所とあの時間を失うのが。

何より柾木さんに会えなくなるのが。

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