第16話
「ご迷惑でなければ、お家のお手伝いさせていただくので」
「そんなことお願いできないですよっ」
「こちらがお願いしてることですから、遠慮なく仰ってください」
「わかりました…では、保育園のお迎えと子供の相手をお願いしてもいいですか?」
「はい、承知しました」
なんとか、こちらの上司からの使命を果たすことが出来そうだ。
こうして、緊急のベビーシッターを引き受けることとなった。
お子さんのお世話だけお願いされたのだが、先生の執筆の妨げになる気がかりは出来るだけ遠ざけたいので家事も引き受けることとにした。
保育園のお迎えまではまだ時間があるので、流しに置いたままの食器を洗って、家の中に掃除機をかけて洗濯をした。
先生に昼食を準備して、しばらく先生の執筆を見守っているとお迎えの時間が来た。
保育園には先生から連絡をしてもらっていたので、お子さんの"らなちゃん"を無事に家まで連れ帰ることが出来た。
らなちゃんにオヤツを出して、隣に座っていると
「ねぇねぇ、おねーさん」
「うん?なあに?」
「おねーさんは、すきなひといる?」
「ゴボッ」
まさか5歳のらなちゃんからそんな質問をされるとは思わず、噎せてしまった。
「うん、いるよ」
「そうなんだ。らなもね、いるの」
「そうなの?」
「でもね、まだこいびとじゃないんだ」
「え!」
「みっちゃんもけいちゃんも、えりちゃんもこいびとがいるんだよ〜」
最近の5歳児に彼氏がいるのは珍しくないらしい。
「でもね、らなのすきなひと、もうすぐおひっこししちゃうんだって」
そう言うとらなちゃんは俯いてしまった。
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