第15話
豊中駅から徒歩10分の一軒家の前で立ち止まる。
「(ここだ)フーッ 」
一つため息を吐いて、インターフォンのボタンを押した。
「ピンポーン」
音がしてしばらくすると、カチャッと音とともに
「えっ?藤崎さんっ!?ちょ、ちょっと待っててくださいっ。ガチャ」
少しして、門の向こうにある玄関の扉から佐々木先生が飛び出て来た。
「藤崎さんっ、わざわざ大阪まで来たんですかっ」
「はい…」
とりあえず、先生ご本人は元気なようで一安心した。
先生は私を自宅へと招き入れてくれた。
想像どおり、先生は原稿に集中していたようだった。
手土産を渡すと、
「バターサンドっ!これ大好きっ。ありがとうございます!」
「いえ。先生、お忙しいのに押しかけてすみません。出る前に連絡したんですが、お出にならなくて心配でここまで来てしまいました。原稿遅れることのない先生がおっしゃる事情はよっぽどの事だと思いましたので、こうしてご迷惑は承知の上、伺わせていただきました」
「心配とあとご迷惑かけてすみません。子供が一昨日から熱出して、保育園にも行けないから自宅で看病してたんですけど、体調悪いからずっとグズグズで離れてくれなくて」
「そうだったんですね。お子さんはもう大丈夫ですか?」
「はい、熱も下がって今朝から保育園に行きました。とりあえず、できる限り急いでと思って集中してたんで、電話もメールも無視しちゃってすみません!」
「先生、もう大丈夫ですから…」
先生のあまりの平身低頭な姿にこちらの方が恐縮してしまう。
「先生、明日の午後一までに入稿は難しいですか?」
「午後一……」
先生は考え込んでしまったが、仕事上こちらもできればなんとか了承して欲しいところだ。
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